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COP26とは?国連気候変動枠組条約第26回締約国会議について |ESG Talk #13

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2021年最後のPodcast配信では、2021年10月31日から11月12日までに開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)についてお届けします。今回は、OpenNetworkLab(Onlab)の松田さんをゲストに迎え、質問形式でCOP26についてお話しして頂きました。今回の記事では、COP26についてわかりやすく説明し、今回の議会での決定事項や今後の課題についてお話していきます。

これまでのCOPについて

COPは1995年より毎年開催され、今年で26回目となりました(2020年は、コロナの影響で延期)。目的は、上昇する地球の温度、それに伴い増えた自然災害、海面上昇などで地球と地球上の全ての生物の生存が危うくなる状態の前に、国際社会がどのような対策をとるのか、話し合うための会議です。また、地球温暖化の主な原因であるCO2などの「温室効果ガス」の排出量を、どれだけ減らせるかが根本的なカギとなっています。1997年の第3回は、日本の京都で開催され、京都議定書が締結されました。なお、今年の開催国は、英国のグラスゴーで開かれ、約200の国と地域が参加しました。2015年のCOP21で合意されたパリ協定では、以下のような点が含まれていました。

・世界の平均気温上昇を産業革命前から2度未満、できれば1.5度
・温室効果ガスであるCO2の排出量を2030年までに10年比で45%減らすことが必要
・すべての国は2015年以降、温室効果ガスの削減目標を5年ごとに見直す
・国連に提出しなくてはいけない

出典:The Intergovernmental Panel on Climate Change

そして、2019年のCOP25では、排出削減量の計上方法について一部の新興国と先進国との間で意見が分かれ、交渉の妥結に至りませんでした。COPの議決は全会一致が原則ということもあり、取りまとめに向けては、COP26の議長国である英国のリーダーシップが問われていました。
COP26は、各国が更新した目標をもとに、世界全体の削減計画が協議される初めての場となり、大きく分けて二つの成果が求められています。一つ目は、温室効果ガスの排出削減の強化。「パリ協定」が目指す目標、つまり、世界の平均気温の上昇を「2度より充分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求する」ことに向けて、明らかに足りていない各国の取組み強化を打ち出せるかどうかです。
二つ目は、パリ協定のルールブック議論の中で、最後まで積み残された、「市場メカニズムのルール」などの議論について結論を得ることです。合意にはすべての締約国の賛同を得ることが必要で、先進国がいかに途上国との溝を埋められるかがカギとなりました。気候変動を招いてきた先進国が率先して対策をするべきですが、それが不十分な状況で、「なぜ発展途上国側にも同じ目標が課されないといけないのか?」と不満の声が挙がりました。そのため、 先進国は途上国に対して2020年までに官民合わせて年間1000億ドルを供与することを約束しました。しかし、動員額は2019年時点で800億ドルにも達してない状況です。最終的に、世界の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えるための削減強化を各国に求める「グラスゴー気候合意」が採択され、パリ協定のルールブックも完成しました。

「COP26」の目的と今回の合意ポイント

―COPとは何を決める場で何が目的か教えてください

COPとは、世界で問題となっている気候変動による地球の温暖化に対して世界中の国と地域が地球の温暖化の抑制の方法を議論する場のこと。この会議が設けられるようになり始めたのは、地球温暖化の主な原因であるCO2の排出が、国の成長と密接な関わりがあるためです。国が大きく発展し産業を盛り上げるために使用する安価なエネルギーである石炭は、CO2を大量に排出します。そして現在の先進国は、産業革命時代に石炭を燃やして産業を拡大させたおかげで、今日発展している背景があります。
そのため問題となるのが、現在先進国となっている国と、これから発展しようとしている発展途上国の不公平さがあります。発展途上国もこれから産業を拡大していくために安価なエネルギーを使用したいが、近年になりその安価なエネルギーは環境に与えるインパクトが大きいため使用しない方向に、先進国主導で進められています。しかしこれでは発展途上国は不公平と感じるため、その方法について会議の場「COP」を作り、議論し解決にむけ、各国がCO2を減らし、気候変動を止めるために、世界中の国々が一緒に取り組んでいこうとしています。
過去に京都やパリで開かれたCOPで合意は取れていましたが、具体的にどれほどの成果があったか判断することはとても難しいため、より実効性のあるものを模索して今回のCOP26は開かれました。

―今回のCOP26での注目ポイントはなんですか

各国でどのポイントで合意することができるかです。やるべきことは決まっているが、どのレベル感で合意ができ、どれくらいの制約をつけられるのか、注目すべき点です。そして今回の合意でおさえておきたいポイントは次の三つ。

1.世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求することで一致

努力の追求という表現ではあるが、数値の目標として、1.5度と決められ一致できたことは大きなポイント。また、これに伴いこの10年間でどのような行動が必要で何をしていくべきなのか明確となるでしょう。

2.先進国が発展途上国の行う気候変動対策について資金面での支援を約束

今回の合意で、先進国が発展途上国の行う気候変動対策について資金面で支援することも約束された。

3.石炭火力「廃止」から「削減」で合意

今回話題となっていたのが石炭。石炭は、掘れば出てくる石で、その石を燃やし、エネルギーにすることができ、コスト面でもとても安価なエネルギーです。そのため中国や発展途上国の発電でよく使われています。しかし、石炭は燃やすと大量のCO2が排出されます。実は、日本でも石炭火力を使用していますが、環境負荷がかからないように石炭を圧縮し、ガス化させて燃焼効率をよくしています。このように技術をもっている先進国は、石炭を使用しても環境負荷をおさえられますが、多くの国ではその技術がないため環境に配慮して石炭を使用することが難しいです。そのため、いかにして石炭を使用しないようにするかがポイントとなります。今回は「廃止」から「削減」へ後退したという見方もありますが、視点を変えるとより現実的になったのではないでしょうか。

出典:NHK

出典:BCCニュース

出典:時事ドットコム

COP26の結果を踏まえた今後のビジネス

―このCOP26での結果を踏まえ、企業はどう捉えていくべきですか

COPで議論されたことは、つまるところルール作りです。
このルールによって企業 / ビジネスにどのように影響されるのかがポイントです。たとえば石炭火力発電所を使わないと、石炭火力発電所を作っているメーカーが技術開発をしても売れなくなる。その代わり、再生可能エネルギーの特定の手法が代替として推奨される場合、その技術に需要が傾き、製品開発にも大きく影響されてきます。
他にも自動車の話も今回大きく注目されていました。EVとエンジンは、扱っている部品が異なります。そのため必ずしもエンジンの部品を作っていた会社がEVの部品をつくれる、というわけではなくなります。そこは、非常に大きな産業構造の変革になるのではないでしょうか。

―産業ではなくIT企業や個人だと、COPをどうみていくべきでしょうか

国際的な合意としてCO2の排出量を下げて、気温の上昇を1.5度に抑えることが合意されていることは意識しないといけません。
その結果、どれぐらいの時間がかかるか分かりませんが、確実にビジネスの中にそのような価値基準で物事が選ばれ、生産されていくようになります。そのためIT企業だったとしても、自分たちの製品がそれを改善するサービスや、それらを支援するサービスなどに対応できているのか、それらを加速させるための仕組み、ツールの開発などの視点で考えると良いです。消費者側の目線としてもこういったニュースが流れることで、街中でも明らかなCO2排出や環境によいサービスに視点が向いていく傾向にあり、こういった人が増えていくでしょう。中長期的な視点で自分たちが選択する製品や消費者の動向をみていくことが大事だと思います。

脱炭素社会に向けた自動車産業の動き

―今回のCOP26の開催前後で気になったニュースはありますか

自動車関連のニュースが気になりました。先日もトヨタがレクサスをすべてEVにするというニュースをしていましたが、車がどうなっていくのかが非常に興味深いです。自動車産業は、サプライヤーなども含めると非常に経済へのインパクトが大きいので、どのような規制になっていくのかは、注目ポイントになります。
また、ガソリン車の禁止が20カ国以上で合意はされましたが、思いのほか賛同は広がりませんでした。なぜなら自国で自動車産業を抱える国は、経済へのインパクトが大きいため、賛同しにくいからです。他にもEV自動車を増やすと公言している自動車メーカーも、これに賛同していません。そのため、全体的な規制となったとき、本当にすべてEVに偏っていくのか、それとも現実的な策としてのハイブリットが根強く生き残るのか注目ポイントです。
日本の世界的な自動車メーカーであるトヨタは、脱炭素化の評価で最低ランクをつけられましたが、実はメーカー別の1台あたりのCO2排出量を見るとトヨタは2位にあたります。その理由は、ハイブリット車を製造しているからです。 しかしEV戦略においては、レクサスのEV化を発表する前まで出していなかったため、脱炭素の戦略がないと捉えられ評価が下がってしまいました。見方を変えるだけで捉え方は大きく変わっていくので気をつけていく必要もあります。2040年までに新車販売を全て、電気自動車(EV)など二酸化炭素(CO2)を排出しないいわゆる「ゼロエミッション車」への移行への宣言については日本や米国などは見送りましたが、ゼネラル・モーターズ社やフォード社などは企業単位では賛同しました。国家レベルだと影響の範囲によっての判断が分かれてくるのだと思います。

出典:LEXUS NEWS

出典:毎日新聞

出典:MOTA

―次回のCOPの予想と期待することはありますか

COP26では1.5度に抑える努力をするということで合意がとれましたが、石炭に関しての具体目標としては、少し妥協のあるものとなりました。そのため次回のCOPでどれくらい踏みこめるのか期待しています。
そして排出量取引ルールという、CO2を排出した国や企業、排出していない国や企業で取引をすることができるルールがありますが、現状はそのルールの細かな規定がなかなか決まっていません。その仕組みができると、国全体/地球全体がどうなったのかがわかるようになってくるので注目ポイントになるかと思います。
また、国単位でのさまざまな規制やルールづくりがされています。特に欧州では取り組みが進んでいるので、各国がどのような取り組みをしているのかにも注目しておくと良いかも知れません。

(執筆:Rena 編集:Onlab事務局)

出典:HUFFPOST ツバルの外相、膝まで海に浸かりながら、気候変動対策を訴える【COP26】
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出典:日本経済新聞 環境憂う日本の若き声、首相に届け 高校生らがCOP参加
出典:毎日新聞COP26に専用機など400機 首脳、企業家ら 偽善との批判も

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