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社外の仲間と新しきに挑む。KBC九州朝日放送が描くコンテンツ✕バーチャル福岡の世界|Onlab FUKUOKA

社外の仲間と新しきに挑む。KBC九州朝日放送が描くコンテンツ×バーチャル福岡の世界|Onlab FUKUOKA

スタートアップと共に、New Normalに求められるスマートシティ・スマートライフを実現する事業組成を目指すOpen Network Lab FUKUOKA(以下「Onlab FUKUOKA」) 。福岡を中心とした企業とのオープンイノベーションを通し、5G、xR、デジタルツイン等の技術を活用したビジネスを含む、快適で質の高いライフスタイルと都市空間の創出、世界に誇れるまちづくりを目指します。

そんなOnlab FUKUOKAは3rd Batchを2022年7月から11月の期間で開催します。申し込みは2022年5月31日(火) 正午までです。

Onlab FUKUOKA 3rd Batch プログラム参加チーム募集中!
https://onlab.jp/programs/fukuoka/

今回は、Onlab FUKUOKAの協賛企業である九州朝日放送株式会社(以下「KBC九州朝日放送」)の香月さんをお招きし、プログラムディレクターの大木と共に、Onlab FUKUOKAでのこれまでの取り組みや、KBC九州朝日放送として注目している領域、スタートアップとの関わり方について伺いました。

< プロフィール >
九州朝日放送株式会社(KBC) – 全社横断タスクフォース・メディア工房フェロー 香月 和宏

1994年KBC入社。中継カメラマンなど放送技術を経験後、テレビの編成・視聴率マーケティングを経、2011年より新規事業セクションで、主にコンテンツビジネスや福岡のクリエイティブ産業振興に従事。現在、社内横断的な立場で地域メディアとしてのイノベーション推進を行っている。

大木 健人 Open Network Lab FUKUOKA プログラムディレクター

2019年よりデジタルガレージに参画。Open Network Lab FUKUOKAのプログラムディレクターとして、スマートシティにおけるテックの社会実装を目指し、不動産、金融、ヘルスケアなど多岐に及ぶオープンイノベーションを推進。一級建築士/宅地建物取引士。

広告・コンテンツ・地域社会への還元。 KBCが取り組む3つの課題

― KBC九州朝日放送での香月さんの役割を教えて下さい。

香月(KBC):
私が所属しているのは全社横断タスクフォースというプロジェクト組織で、そこでR&D(研究開発)部門として「メディア工房」を担当します。メディア工房では新しいテクノロジーをリサーチしたり、サービスを開発したり、他社とアライアンスを組んだりしています。

九州朝日放送株式会社 メディア工房フェロー 香月 和宏さん
九州朝日放送株式会社 メディア工房フェロー 香月 和宏さん

香月(KBC):
新規事業や投資は現業から遠くなるので既存の部署が担当するのは難しいし、部署が担うとどうしても全社に効果が波及しません。そこで全社単位で何か新しいことをやりたいときはメディア工房が色々な部署に声掛けをして横串で取り組めるようにしているんです。全社横断タスクフォースには私の他にも、番組などのゼネラルプロデューサーが所属しています。

KBC九州朝日放送は社員200人程度の小さな会社ですので、何か新しいことをやりたいと思っても、すべて自分たちだけでできるわけではありません。なので他社と協業したりアライアンスを組んだりする必要があるんです。課題を一緒に解決してくれそうな会社を探し、一緒に取り組む。メディア工房ではそんな仕事をしています。

とは言っても、社内は番組担当する社員がほとんどで、僕の場合、上司は取締役になるので、僕がポツンと1人でいることも多いんです。なのでデジタルガレージの大木さんと仲良くさせてもらって嬉しんですよ(笑)。

大木(Onlab FUKUOKA):
デジタルガレージも東京本社で、福岡支社は私1人なのでいろいろ情報共有させてもらっています(笑)。

― 社内では新しい技術やサービスを扱うスタートアップとの接点も担当されているんですね。具体的にはどんな課題に取り組まれているのでしょうか。

香月(KBC):
大きくは3つです。まずは広告的なもの。KBC九州朝日放送はテレビとラジオの放送業を営む、いわゆる「ラテ兼営局」なので「CMを流しませんか」と広告主に営業します。ただテレビ・ラジオというものは双方向通信ではないので、基本的には視聴者の反応がわかりません。CMを観た方が「いいね」と思ったのか、その後商品を購入したのか。そういうことが直接はわからないのが課題です。

香月(KBC):
でもウェブ広告だと、ユーザーの反応は簡単にわかりますよね。スポンサーに広告の価値を簡単に証明できないというのは、マスメディアの影響力がだんだん下がってきている要因の1つとなっています。ですのでデジタルマーケティングの要素を取り入れて、それをちゃんと広告主に提供する。それでテレビ・ラジオの価値を高める、ということが解決したい課題の1つ目です。

次の課題はコンテンツです。今の時代、スマホ等のデバイスが増えていますよね。テレビとスマホでは、同じ動画でも観られるコンテンツは違います。つまりコンテンツの細分化が必要とされているんです。

世の中全体で見ると色んなコンテンツを作らなければいけないわけですが、テレビ局にはテレビ・ラジオ以外でも、いいものを作れる制作や技術のアセットがある。いいコンテンツを作った上で、ウェブやスマホ等コンテンツの出し口やビジネススキームを、今リサーチしているところです。

最後に、KBC九州朝日放送は地域の放送局なので、地域と一緒に成長していきたいという思いがあります。地域のメディアとして、地域が有用と思ってくれる企業となれるのか。以上の3点を考えるための、全社横断タスクフォースとしてのメディア工房の役割です。

地域シェアサイクルスタートアップとの連携でデータ活用した新しい取り組み

― KBC九州朝日放送は2021年、シェアサイクル「Charichari」を運営するneuet株式会社との資本提携を発表しています。2022年には「アサデス。アプリ」とCharichariのアプリ連携も開始しました。狙いを教えて下さい。

香月(KBC):
色々と理由はありますが、neuet株式会社の代表である家本賢太郎さんという起業家の、シェアサイクル事業を地域に根差そうとする熱い思いに惹かれたというのが最大の理由です。

香月(KBC):
ビジネス的な観点もお話しすると、地域の中の移動データと弊社のビジネスに親和性を感じたからです。自転車の行動履歴は非常に重要なデータ。「ここからあそこに移動している」ということはもちろん「そういう人はこういうテレビを見て、こういうCMを見ている」ということがわかれば、テレビ・ラジオには大きな価値になります。テレビで「この町のこんなお店を紹介した」ということがあって、実際にCharichariでそこに行った人がどのくらいいた、ということがわかればコンテンツの効果測定ができますし、「ここに行った人にはこういうCMが打てる」ということもあるでしょう。

― 先程の課題、1つ目の広告、3つ目の地域という話に関わってきますね。

そうですね。2番目のコンテンツにも関わってくるのが、Charichariとのアプリ連携です。KBC九州朝日放送の看板番組で、月〜金の朝の6〜8時に放送している「アサデス。 KBC」という番組がありまして、アプリも出しているんです。既に約20万ダウンロードされていて、DAUは2万人。アプリを見るとポイントがもらえるのですが、このポイントでCharichariが乗れるようになっています。お互いに広告を出したり、今連携を深めているところです。メディア工房では他に、セキュリティ関連の案件を扱ったり、まだ非公開の協業案件を進めているところです。

「ローカルが潤う」Web3✕メタバースの可能性

― 大木さんからみたKBC九州朝日放送さんとの連携やオープンイノベーションの可能性を教えていただきたいのですが、どんな領域になりそうですか?

大木(Onlab FUKUOKA):
今デジタルガレージはWeb3やメタバースに関する事業展開を模索しているところですが、KBC九州朝日放送さんにも関心を頂いています。Web3やメタバースといわれるような仮想現実での体験は、香月さんがおっしゃっていたコンテンツにも関係するのではないかと思います。

Open Network Lab FUKUOKA プログラムディレクター 大木 健人
Open Network Lab FUKUOKA プログラムディレクター 大木 健人

香月(KBC):
Program募集テーマの中でも、バーチャル福岡については特に関心を寄せています。

大木(Onlab FUKUOKA):
香月さんから「メタバースでの事業展開を構想している」というお話は以前から聞いていて、社内でも議論しているとおっしゃっていました。メタバースはまだ黎明期なのに、動きが早いですよね。コロナ禍ということもあってフィジカルに体をもっていくことが難しい場合もあり、バーチャル空間上で福岡のコンテンツやプロダクトに触れて、そこから購入・体験できるといいよね、という話をしたのを覚えています。実際、地域に根ざしたコンテンツを作れて、プロモーションもできるKBC九州朝日放送とメタバース・バーチャル福岡構想は相性がいいと感じます。

香月(KBC):
「メタバース」という言葉が世間で流行って、社内でもバズったんですよね。大木さんからも社内で講演してほしいなと思っているのでよろしくお願いします(笑)。

大木(Onlab FUKUOKA):
ありがとうございます、頑張ります(笑)。

バーチャル福岡というテーマについては、「ローカルに根差したメタバース空間」を立ち上げるということに可能性を感じ、Onlab FUKUOKAのテーマの1つにしました。メタバース空間を立ち上げてもニーズがなければしょうがないので、何のために実現するのかを考えることが肝要だと思います。

その点、ローカルのモノがメタバースを介すことによって潤うという世界観が実現できたらみんなハッピーになるはず。

香月(KBC):
「ローカルが潤う」というワードが、我々には刺さったんです。

今メディアでメタバースというと、バーチャル空間を作ってアイドルがコンサートをして賑わえばそれで満足、といった紹介をされることが多いかと思います。ただKBC九州朝日放送は地域放送局なので、やはり地域の人たちにそれをどう還元するか、言い換えればそれで地域の人たちが喜んでくれるのか、ということを考えてしまうんですね。放送局のコンテンツやアセットを上手く使って、「ローカルが潤う」バーチャル福岡に貢献したいです。

香月(KBC):
またバーチャル福岡に続いてWeb3の文脈で言うと、DAO(分散型自律組織)にも関心があります。例えば、CGやアニメの映像制作業界では、クリエイターの多くがフリーランスとして働いているんです。だから韓国とかタイとか、海外にいるクリエイターもいます。放送局や映像制作会社は、そのプロジェクトマネジメントをしているようなイメージ。なのでブロックチェーンを使ったDAOをプロジェクトベースで取り入れる、なんてことも将来的にはもしかしたらあるかも。なんて話をいきなりKBCグループの映像プロダクションの担当者が急にしてきたんですよ。「DAOをつくりたいんだけど」って。そんなこともあって、DAOは注視しています。

スタートアップと一緒に描く、新しいビジネスへの挑戦

― 新しいが故に情報が錯綜しているWeb3やメタバース、DAOについても香月さんは詳しいですね。

香月(KBC):
そんなことないですよ(笑)。ただ僕自身、Meta Quest1・2を持っていたり、結構新しいものが好きな面はあります。

大木(Onlab FUKUOKA):
それは大事なことですよ。僕も日々Web3界隈のプレーヤーと接していますが、Web3の世界観やメタバースを覗いて触ってみるというのが、現時点では一番大事だと感じています。

今、こうしている時にもDiscordのチャットでWeb3の新しいプロジェクトが世界中で進んだり、デジタルコンテンツが何億円もするNFTとして売買されて、なんなら価値が暴落しているわけですよね。でもそんなこと説明してもよくわからないじゃないですか。

香月(KBC):
僕が買ったNFTも安くなっちゃいました(笑)。

大木(Onlab FUKUOKA):
買われたんですね(笑)。

香月(KBC):
新しもの好きなので、結構買いましたよ(笑)。

大木(Onlab FUKUOKA):
香月さんは買っているだろうなと思いました。だってNFTの話をしても体験していなければ話せないようなことが会話に出てきますから。

話を戻すと、そうやってメタバースでもNFTでも新しいものをまず触ってみるというのが大事なんです。体験したからこそわかることもある。そういうWeb3やメタバースの入口となる役割も、Onlab FUKUOKAでは担っていきたいですね。

香月(KBC):
放送局も意外と出不精な人たちが多いので、そういうお話をしてもらえるのはいいかもしれません。ビジネス的な観点で考えると、Web3が浸透するのはまだ先だと思うんです。そう言うと、みんなは「ちょっとまだいいや」なんて思っちゃう。

でも、早く触って理解して、仲間にしてもらえたほうがいいじゃないですか。先述したように、我々は200人の小規模な会社です。社外に仲間を増やさないと、新しい事には取り組めないんです。その入口としてOnlab FUKUOKAを生かしていきたいなと考えています。

― Onlab FUKUOKAは今回、バーチャル福岡、エンベデッドファイナンス、デジタルヘルス、グリーンエネルギー、スマートコンストラクション、ESGと6大テーマを掲げています。バーチャル福岡以外にはどこに関心がありますか?

香月(KBC):
当然ESGはかなり気になります。地域共創という意味でも、サステナブルな観点は非常に重要ですからね。

― どんなスタートアップとお話したいですか?

香月(KBC):
放送局のアセットと言うと、番組や動画、音声コンテンツを作れるノウハウと、地域のネットワークかと思います。なのでこのアセットを上手く活用していただける、テレビ・ラジオが好きなスタートアップとは連携をしていきたいです。

その上で、スタートアップと一緒に事業案を作っていきたいと考えています。僕もいくつかオープンイノベーションプログラムに参加させていただいたことがあるのですが、アイディアをスタートアップに依存するケースが多いんですよね。これはかなり酷なんじゃないかと思うんです。我々のことは当然我々がよく知っているはずで、一緒に考えた方がより良いビジネスモデルにできる。なので一緒にKBC九州朝日放送のビジネスモデルを作ってくれるスタートアップの方とお話しできたら嬉しいです。

大木(Onlab FUKUOKA):
「提案を待っているのではなくて、一緒に作り上げていく」というマインドは、スタートアップにとってもいいことですよね。当然僕たちも色々な産業・企業とお話をして、色んな情報や仮説をもっているので、それを元にお手伝いします。スタートアップもKBC九州朝日放送も、各社のアセットを持ち寄って地域を盛り上げていくということを福岡でやれたらいいですね。

メタバースにしても、テクノロジーはわかるけど、コンテンツを作るのにリアルの知見やノウハウ、ネットワークを必要としているスタートアップは結構いると思うんです。それがローカルのネットワークなら、KBC九州朝日放送と組むのはオススメですよ。

香月(KBC):
地域の課題、地域ソリューション、地域共創といったお話をしてきましたが、そのためには面白いコンテンツを作れるか、広げられるかが個人的には鍵だと思っています。なので、スタートアップと一緒に本気でオリジナルのコンテンツを作りたい。僕だけではなく、放送人はみんなそうだと思います。スタートアップの皆さん、Onlab FUKUOKAでお会いしましょう。

― 香月さん、大木さん、本日はありがとうございました。

香月(KBC)・大木(Onlab FUKUOKA):
ありがとうございました。

Onlab FUKUOKA 3rd Batch 詳細はこちらから

2022年7月から11月にかけて開催するOnlab Fukuoka 3rd Batch。お申し込みは2022年5月31日(火) 正午までです。悩まれている方は、お気軽にご相談下さい。

(執筆:pilot boat 納富 隼平 撮影:taisho 編集:Onlab事務局)

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