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日本の技術を世界にひろげる、働き方を変える動画教育プラットフォーム「VideoStep」|Meet with Onlab Grads Vol.34

日本の技術を世界にひろげる、働き方を変える動画教育プラットフォーム「VideoStep」|Meet with Onlab Grads Vol.34

Open Network Lab(以下、Onlab)は「世界に通用するスタートアップの育成」を目的にSeed Accelerator Programを2010年4月にスタートし、これまでに数々のスタートアップをサポートしてきました。今回ご紹介するのはOnlab第23期、株式会社LAMILA 代表取締役の迎 健太さんです。

株式会社LAMILAは技術伝承や人材教育の効率化を実現するために、文字や画像では伝わらない社内のノウハウを簡単に動画で伝達するための動画教育プラットフォーム「VideoStep」を開発しています。迎さんは学生の頃から世の中に新しい価値を提供できるものづくりをしたいと考えていました。東京大学の同級生が大手優良企業へ就職していく中、なぜ学生起業家の道を選択したのでしょうか。また、VideoStepを介して今後はどのようなことへ挑戦したいのかをオンラインで伺いました。

< プロフィール >
株式会社LAMILA 代表取締役 迎 健太

佐賀県出身。東京大学経済学部卒。リンクアンドモチベーションの子会社やスタートアップで事業開発を経験後、東大経済学部3年時に株式会社LAMILAを学生起業。地方で感じていた、人手不足や少子高齢化の課題を解決するために『VideoStep』を立ち上げる。

文字や画像では伝わらない現場のナレッジ。VideoStepで簡単に動画作成・共有

― VideoStepのサービス概要について教えてください。

VideoStepは、AIや動画を活用して文字や画像、口頭では伝わりづらい社内情報を、簡単に動画で見える化できるクラウドサービスです。現在、大企業から中小企業、スタートアップまでさまざまな企業様にご利用いただいており、製造業ではVideoStepを使って現場の難しい作業やベテランの技術を動画にしてノウハウを残しています。また、飲食業様では各店舗の接客マニュアルや従業員のナレッジを動画にしてVideoStep上でデータベース化したり、IT業様ではシステムの操作手順や簡単な作業、業務フローを動画にして新人の方が簡単にオンボーディングできる体制を構築したりする仕組みを提供しています。

VideoStepには主に3つの魅力があります。まず、AIの音声読み上げ機能により、ナレーションいらずでパワーポイントのような既存のビジネス資料を動画にすることができます。次に、エンタープライズ企業でも全社導入が可能なフォルダやシングルサインオン・AzureADとのユーザー同期機能(ID・パスワードによるユーザー認証を一度行うだけで複数のWebサービスやアプリケーション、クラウドサービスへログインできる仕組み)も設計しています。3つ目に、VideoStepのモバイルアプリではiOS・Androidに対応しているため、タブレットの導入が増えている現場で操作手順マニュアルから業務動画マニュアルまで簡単に作成できます。

そのため、現場の業務マニュアルや操作手順などの動画を作ったことのない方でも簡単に作ることができたり、社内に散らばる暗黙知や属人化されたノウハウを動画でデータベース化して社内の必要なメンバーにどこでも共有できたりする仕組みとなっています。

― この事業を始めた経緯をお聞かせいただけますか?

私が東京大学経済学部の3年生だった令和元年に起業して、現在でちょうど4年目になります。もともとものづくりやガジェット、ソフトが好きなので、私自身も世の中に新しい価値を提供できるようなものを作りたいと思っていました。また、大学の友人には外資系コンサルティング企業や外資系金融機関への就職を目指す人が多かったので、私もそういった企業に一度入ってから起業しようと考えていました。

ただ、さまざまな企業やベンチャーでインターンをしてみた結果、大企業では裁量権を持つポジションへ到達するまでに相当な時間を要することを肌感覚で掴み、「これは自分で起業しないと」と。30代、40代になると結婚や子育てといったライフステージが変わっていきますが、学生だったら圧倒的に起業のリスクが少ない。また、世の中には学生起業家として活躍する方が多いことにも背中を押され、就職せずに学生起業するという選択肢を取りました。

― 現場で業務マニュアルやベテランの技術を伝える時に生じるペインをどのように抽出しましたか?

お客様に何度もヒアリングしましたね。法人向けに新しい価値を提供できるようなことをやりたいと考えていた大学生の頃、OB訪問アプリを使ってあらゆる企業の皆さんがどんな課題を持っているのかを1日4件のペースでひたすら聞いて回りました。大企業から中小企業、スタートアップまで複数の業種へ聴き込み「働いている方々はこういうことを考えたり悩んだりしているんだ」と実感するようになりました。

Onlabに参加したことで事業戦略や競争優位性の設計に集中できた

― 設立したのは2019年5月、Onlabのプログラムへご参加になったのは2021年6月末ですが、当時の事業はどのような状況でしたか?

当時はまだ機能がありませんでしたが、後にVideoStepになるようなプロダクトはありました。そのタイミングでOnlabへ参加した理由は、プロダクトをお客様に受け入れられるものにして収益化していかなければならないと考えていた矢先、SmartHRさんをはじめとしたOnlabを経て活躍している卒業生スタートアップの事例を見たからです。Onlabだったらお客様にご利用いただくための仮説検証を伴走してくれると思ってエントリーしました。

― Onlabへ参加していた期間中、どのような変化がありましたか?

現在はすでに事業が回り始めていたのでお客様との商談が入ってなかなか時間が取れなくなってしまったのですが、Onlabに参加している間は事業の今後やプロダクトについて集中して考えることができました。特に事業については今後の分野別ターゲットのセグメンテーションや戦略、競合優位性をじっくりと再考しましたね。お客様はまだ少なかったですが、協力してくださる企業様へ各部門の業務についてヒアリングをして、悩んでいるポイントや「こうだったらいいのに」というご希望を聞き出していきました。週に一度は現地に足を運んで工場を見に行ったり、綿密にやりとりをしてプロダクトをお使いいただいたご感想やご意見を頂いたりしました。

― Onlabのメンターによるアドバイスで印象的だったものはありますか?

「プロダクトに対する説明力を高めよう」というアドバイスが非常に印象に残っています。私はピッチがあまり上手くなかったので、Onlabのメンター陣をはじめ、さまざまな方々から具体的なアドバイスを頂き、ピッチを作り込みながら聞き手に分かりやすく説明できるように特訓を受けました。それまではマーケットのことばかりを話していましたが、お客様の課題やニーズに基づいて展開できるようになったことが一番の変化ですね。

― Onlab23期生の皆さんとはどのように過ごしましたか?

コロナ禍だったのでオンラインでの受講がメインでしたが、4社との交流はあったので「こうだよね」みたいなざっくばらんな話をよくしていました。毎週、ピッチの練習で他のスタートアップのお話を聞きながら「こんな感じに変わっていっているんだな」「こういうふうに成長させていっているんだな」と同期の前進を実感して自分のモチベーションを上げていました。

「動画の作成・編集が簡単」と圧倒的体験ができるのはVideoStepだけ

― VideoStepの近況についてお聞かせください。

ありがたいことに東京ドームファシリティーズ様やJFEエンジニアリング様、マンダム様といった大企業とのお取引が増えてきており、展示会に出展した時にご挨拶をさせていただいた企業様にもご導入いただくことが多いですね。また、弊社のホームページをご覧になって資料をダウンロードしてくださったり、日経新聞の「カンコツの伝承」というシリーズで掲載された記事をご覧になってお問い合わせいただいたりしています。

― 現場でマニュアル動画を作れるプロダクトをリリースしている会社は他にもいらっしゃいますが、「ここは負けない」と確信していらっしゃることはありますか?

「動画の編集が圧倒的に簡単」とお客様に体験していただいていることです。他社のプロダクトだと動画からしか作れないところ、VideoStepを使えば既存のビジネス資料や写真からでもパワーポイントを編集する感覚で動画を作れます。誰にとっても使い慣れた操作感なので、動画作成が属人化することもありません。「こういうことをやりたい」「こういう材料から動画を作りたい」「便利そうだけど作るハードルが高そう…」というお客様からのお声に応えられて、全て簡単に操作できるのはVideoStepだけだと思います。

― 現在はどのようなメンバーがいらっしゃいますか?

現在、弊社には8名いますが、その半分は私と同じ東京大学出身のメンバーです。そもそも動画編集の技術はニッチなんですよね。Webブラウザ上で動画を編集するプロダクトはそんなにメジャーではないんです。そういった技術に対しても学習意欲や向上心を持ってキャッチアップできるエンジニアがいることが弊社の価値です。また、通常、動画を編集するには専用アプリを使いますが「仕事中にスマートフォンを触っていると周囲から『遊んでいるんじゃないか?』と疑われるかもしれないから、PCのブラウザで編集したい」とおっしゃる方も多いんです。弊社のエンジニアはお客様が気にするポイントやその心境、背景も汲み取ってプロダクトへ反映させています。

― メンバーの皆さんをどのように集めてきましたか?

大学の同級生だった友人は某著名コンサルティングファームに勤めてから弊社へ転職してきましたが、「コンサル会社では小さなタスクをひたすらやっていたが、何のためにやっているのかが分からなかった」と。その点、弊社ではメンバー全員が自分の仕事が売り上げに直結するポジションにいますし、エンジニアも自分が開発したものがオプション機能として搭載されるので、リアルな価値に繋がるルートが速くて面白いと。現在はまさに事業が伸びている段階で階層化されていない組織だからそう感じるのかもしれません。

人材採用では基本的に私自身の感覚で決めています。正直、外れる時もありますが「この人だ」という直感で上手くいっているケースが多いのでそれを大切にしています。事業拡大に向けて、来年には導入社数100社を絶対的な目標数値として掲げています。それを達成するためにメンバーを10名、特にエンジニアとセールスのメンバーを中心に増やす必要があると考えています。

VideoStepはお客様にとって最も使いやすいプロダクトでありたい

― 今後の事業戦略についてお聞かせください。

事業戦略にはマーケティング面とプロダクト面の2つがあります。まずマーケティング面で非常に力を入れているのは代理店のようなパートナー制度。パートナー企業さんと連携してさまざまな企業様の課題を解決することにフォーカスしています。例えば、VideoStepをご導入いただいている企業様には非IT企業が多く、ネットワーク環境が整っていなかったりタブレットが現場で用意されていなかったりしているので、パートナー企業さんと手を組んで導入前のご提案やサポートも強化しています。

プロダクト面では、VideoStepは現場で動画を作って共有する製品としては仕上がっているので、お客様の「簡単に動画を作れる体験」をアップデートしていくことはもちろんですが、蓄積された動画のデータベースをもとに各企業の業務改善や教育管理を推進できる機能を開発したり、他のプロダクトと連携したりするところも推し進めていきたいです。

また、クラウド録画サービスを作っているSafie(セーフィー)と連携して、遠隔からリアルタイムで会話をしながら実施した業務の録画データを動画マニュアル化して、技術伝承や人材教育の効率化を目指す実証実験も実施しています。このように業務で使える幅を広げながら、新人のオンボーディングやベテランの技術伝承をより簡単にしていく世界線を作りたいと考えています。

― VideoStepにはすでに外国人人材の教育にも対応できる仕組みがあります。海外進出はどのようにお考えでしょうか。

VideoStepでは字幕や音声を日本語から外国語に翻訳したり多言語で吹き込んだりすることもできるので、海外進出は事業戦略の一つに入れていますが、実は日系製造業のクライアントが世界各地に工場を所有しているのでベトナムやインドネシア、中国でもVideoStepでも使われています。コロナ禍によって現地での業務マニュアルや技術の伝承が難しくなった時期もありましたが、「マニュアルの見える化」の需要が増した今だからこそ、弊社はこういった世界各地に従業員がいる企業様にご利用いただけるように動画やシステムの多言語対応をアップデートしていきます。

― これからOnlabへ応募しようとしているスタートアップの方に向けたメッセージをお願いします。

毎週のピッチやメンタリングで沢山のフィードバックをもらう機会があるのですが、全てに対応していくのは大変だと思います。ですが、プロダクトができ上がる前だからこそ、事業を成長させるためにしっかりと土台を作る時間を割いてOnlabプログラムに取り組むことをおすすめします。

― 最近、Onlabプログラムにはすでにプロダクトができているスタートアップが参加するケースが増えていますが、プロダクトがある中でもチャレンジできることがあればお聞かせください。

やはり競合優位性を考えることだと思います。当然ながらお客様は必ず他社プロダクトと比較するので、自社の競合優位性を考え尽くしてセールスに行ったりマーケティングを拡大したりする準備が整ったら強いですよね。

(執筆:佐野 桃木 編集:Onlab事務局)

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