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強みを活かして事業に挑む – Onlab卒業生が実践する逆境の乗り越え方|maricuru|Road to Success Onlab grads vol.7

強みを活かして事業に挑む – Onlab卒業生が実践する逆境の乗り越え方 |maricuru|Road to Success Onlab grads vol.7

【プロフィール】
株式会社maricuru 代表取締役CEO 高木 紀和

名古屋大学卒業後の2009年、リクルートに入社し、新規事業の事業開発・法人営業に従事。社内受賞を多数経験したのち、最年少で管理職となる。独立起業後は、サービス売却を3度経験。その後、自身の結婚式で行ったプロジェクトが、テレビ番組などで多数取り上げられ、世の中のニーズを肌で感じたことをきっかけに、株式会社maricuru(旧社名・ダックリングズ株式会社)を設立。

【プロフィール】
Open Network Lab 原 大介

2005年慶応大学卒業、公認会計士試験合格。2007年より新日本有限責任監査法人勤務。金融業や製造業等の様々な業務の監査に従事。2012年より2年間、アメリカ・シリコンバレーに出向、現地でアメリカ企業の上場を支援(3社)。2015年より、不動産ビッグデータを利用したコンサルティング会社・ゴミを原料としたケミカルリサイクルを営む会社でCFO。エクイティのみならず、デッドや助成金等の様々な資金調達手法に精通。現在までの累積調達額は90億円超。2019年11月よりDG参画。

2016年に開催されたOnlab第12期のプログラムで、最優秀賞であるBest Team Awardを受賞した株式会社maricuru(以下、「マリクル」受賞当時の社名は、ダックリングズ株式会社)。代表の高木紀和さんは20代ではじめての起業を経験して以来、これまで様々なの事業を立ち上げてきたシリアルアントレプレナー(連続起業家)です。EC、VR映像制作、配信プラットフォーム事業等、幅広い領域で事業を展開し、2018年には花嫁同士が結婚式の情報交換をするコミュニティアプリ「maricuru」をローンチしました。約1年で、利用者、口コミ数ともにウェディング業界における日本最大級の花嫁コミュニティに成長しています。

順風満帆にも思える高木さんの起業家人生。しかしそこに突如として、苦難が降りかかりました。コロナ禍の発生です。新型コロナウイルスの感染拡大により、ウェディング業界は大打撃を被り、maricuruはアプリの閉鎖に追い込まれます。高木さんはこの苦境を乗り切るため、Onlab卒業生の支援チーム「IncubationTeam」の力を借りて、さらなる新規事業の創出に乗り出しました。

そこで今回は、高木さんとOnlab担当の原大介の2名で、maricuruが直面した困難や、今後の展開などについて語り合う対談を実施。「Onlabを使い倒している」と力強く語る高木さん。混乱の続くコロナ禍をどのように乗り越えようとしているのでしょうか。(マリクルの事業に関する記事はこちらから)

※以下「マリクル」は法人名、「maricuru」はサービスを表すものとします。

コロナ禍に素早く対応し新規事業創出。次のフィールドはインスタグラム

株式会社maricuru 代表取締役CEO 高木紀和
株式会社maricuru 代表取締役CEO 高木紀和

― 2018年にローンチされた「maricuru」は約1年で日本最大級の花嫁コミュニティに成長しました。飛躍的な成長を遂げた原動力は何だったと思われますか。

高木:一番の要因は、ウェディング市場においてサービス提供者と消費者との間に大きな情報格差があったことだと思います。多くの結婚式では式場がプランニング全般を取り仕切るため、消費者側に情報が集まらず選択の余地が少ないのが現状です。

実際、マリクルには「卒花スタッフ」と呼ばれる、結婚式を経験した女性スタッフが10人以上所属しているのですが、彼女たちからも情報格差に対する不満の声はしばしば聞かれます。そうした不満が鬱積していたところに、口コミで結婚式の情報が交換できたり、結婚式場のユーザーレビューが閲覧できたりするmaricuruが登場したので、多くの支持を集める結果になったのではないかと分析しています。

― しかし、コロナ禍によりウェディング業界は大きな打撃を被りました。maricuruの事業への影響はかなりありましたよね。

高木:事業への影響は大いにありました。最近では、マリクルはコミュニティ運営だけでなく、結婚式の二次会プロデュースやブライダル人材の副業マッチングサイトも展開するなど、ウェディング関連の事業を収益の柱としていたんです。

それがコロナ禍により大幅に減少してしまったため、maricuruもアプリを閉鎖するなど、事業を一部縮小せざるを得ない状況に追い込まれました。そこでこの苦境を乗り越えるために、原さんをはじめとしたOnlabのIncubation Teamの皆さんにに相談したんです。

原(Onlab):2020年3月ごろから、私はマリクルの資金調達に向けた支援を担当していました。そんななかで新型コロナウイルスが流行して、高木さんから「社員のリストラを検討せざるを得ない事態だ」と伝えられたんです。慌ててIncubation Teamにマリクルの状況を共有して、3名のチームメンバーと高木さんとで打開策を練り始めました。

Open Network Lab 原
Open Network Lab 原

― そうした難局をどのようなアイデアで打開したのでしょうか。

原(Onlab):カギになったのはmaricuruのインスタグラムでした。maricuruは現在、アプリやウェブサイトを閉鎖し、インスタグラム上でサービスを展開しているのですが、コミュニティの形成や運営が非常に上手いんですね。その点に着目したIncubation Teamのメンバーが「このノウハウを企業のSNSマーケティングの支援事業として展開できないか」と発案しました。

そこで急遽、私たちOnlabメンバーも営業に協力して複数の企業に提案したところすごく好評で、4社ほどから受注を獲得できました。その後もデジタルガレージのグループ企業を紹介して顧客数を拡大し、現在、マリクルの事業の柱として、インスタグラムのマーケティング支援事業が確立しつつあります。

高木:まさか、maricuruで培ったインスタグラムの運用ノウハウが、他社の課題解決になるとは思っていませんでした。この先、結婚式が無くなることはないと思いますが、コロナ禍が収束するまでの数年間は、おそらくウェディング市場は「冬の時代」が続きます。そうした苦しい状況を乗り切るための事業を発案してくださったIncubation Teamの皆さんには、心の底から感謝していますね。

原(Onlab):とはいえ、これまで注力していた領域とはかけ離れた事業を提案されて、素早く行動を起こせる高木さんのフットワークの軽さは流石です。

7月にマリクルは日本政策金融公庫から融資を受けていて、その際の面談に私も参加しているのですが、先方も高木さんの素早い対応を高く評価されていました。これまで数々の事業を手掛けてきた経験値が、コロナ禍という危機を乗り切る強力な武器になったのだと思います。

Onlabの支援を受け、ワーケーション事業も始動

提供:リゾートワークス
提供:リゾートワークス

― マリクルの今後の展望について教えてください。

高木:現在、新たな事業を準備している最中です。今後はこの事業を、コロナ禍下におけるマリクルのもう一つの柱として育てていくつもりです。

― 次はどんなビジネスの展開を狙っているのでしょうか。

高木:次に見据えているのは「ワーケーション事業」です。ワーケーションとは、ワーク(労働)とバケーション(休暇)を組み合わせた言葉で、リゾートなどの観光地でテレワークすること。コロナ禍における観光産業の落ち込みを受けて、政府主導による普及の取り組みが検討されていることから、現在、世間的にも注目を集めているワークスタイルです。

提供:リゾートワークス
提供:リゾートワークス

今後は、ワーケーションの普及を通じて、宿泊施設における空室の解消などに取り組んでいこうと考えています。

― ワーケーション事業に進出しようと思った動機は何でしょうか。

高木:既存事業とはかけ離れた領域なので、驚かれる方は多いと思います。「一体、お前は何がしたいんだ!」と怒られてしまいそう(笑)。

しかしこれついても他の事業と同様に、身の回りにあった課題を突き詰め、かつ自分の熱を放出できるかどうかを考えた結果、辿り着いた事業です。

マリクルは以前からテレワークを積極的に推進していたのですが、コロナ禍になってから100%リモート勤務に移行しました。そのなかでテレワークの組織ならではの課題が見え始めたんです。

例えばテレワークに通勤手当はいりません。また、オフィスの近隣に住むと家賃を補助するといった企業も多いですが、それも不要になります。つまりテレワークが普及した社会では、企業の社内制度や福利厚生を新たな形に見直されなければなりません。ワーケーションは、そうした課題のソリューションの一つになり得ると睨んでいます。リゾート地で非日常を感じながら仕事をするといった体験が、働き手のモチベーションを引き出し、幸福度を高めることに繋がるのではないかと。

一方で、ワーケーション事業は社会的な意義も大きいと考えています。観光産業は日本経済の根幹を支えている一大分野です。しかしそれが今、コロナ禍で回復不可能なほどの打撃を受けようとしている。

仮に、3年後に新型コロナウイルスの感染拡大が収束して、インバウンドの需要が回復するとして、それまで観光産業を支えて、持ち堪えるような取り組みが必要だと思います。ワーケーションの推進は、そうした現在の日本社会が抱える課題の解決にも貢献すると信じています。

事業は変わっても、「軸」はブレない。芯の強さこそ起業家の武器になる

Open Network Lab 原
Open Network Lab 原

― 原さんはマリクルの多彩な事業展開を、どう評価されていますか。

原(Onlab):一見、バラバラなことをやられているように見えて、実は高木さんの事業に対する姿勢は一貫していると思います。目の前の課題を敏感に感じ取って、速やかに実行に移す。しかも新規事業を始めるにしても、過去の経験をちゃんと活かしているんですよね。

例えば、インスタグラムのマーケティング支援事業はmaricuruのサービスが元になっているし、ワーケーション事業にしても、「結婚式場という箱物をいかに有効活用するか」という問題意識から出発したウェディング事業と相通じるものがあります。

そうした確固とした軸を持たれている点が、高木さんが起業家として結果を出し続けられる秘訣なのかなと思います。私自身、今回マリクルの支援に携わってみて、様々な案件があれよあれよと進行し成果に結びついていくので、驚きの連続でした。

高木:しかし、今回のコロナ禍は正真正銘の危機でした。原さんをはじめとしたIncubation Teamの皆さんや、Onlabの手厚い支援のおかげで、何とか望みを繋げました。

我ながら「Onlabを使い倒しているな〜」と日々実感しながら仕事をしていました(笑)。 こうした企業としての難局にも共に立ち向かってくださる強力な支援体制は、これからOnlabへの参加を検討している方だけでなく、プログラムの卒業生にも強くアピールしたいですね。

― 本日はありがとうございました!

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