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【Fond福山氏・Tippsy伊藤氏に学ぶ】スタートアップが押さえておくべき、アメリカでの起業のノウハウとは(後編)

【Fond福山氏・Tippsy伊藤氏に学ぶ】スタートアップが押さえておくべき、アメリカでの起業のノウハウとは(後編)

アメリカで起業して事業成長を遂げているOnlab卒業生のFond Technologies, inc. CEO 福山 太郎氏とTippsy, Inc. Founder / CEO 伊藤 元気氏をお招きして開催した、2023年4月27日のオンラインイベント。本記事ではイベント後半の「アメリカで人材を採用する時の注意点」「アメリカでの人材マネジメント」についてのディスカッションや、「アメリカ人投資家との相性はどう見極める?」といったQ&Aセッションの模様をお送りします。

イベント前半の「アメリカでの起業のきっかけ」「アメリカでの起業のメリット・大変なこと」「アメリカで成功するための行動・Tips紹介」のディスカッションの模様は前編の記事をご覧ください。

「アメリカで人材を採用する時の注意点」「アメリカでの人材マネジメント」

松田(Onlab):アメリカで人材を採用する時の注意点や、いい人材を獲得するためのコツは何でしょうか。また、アメリカ人の社員をどのようにマネジメントしていますか?

伊藤(Tippsy):Job Description(職務内容)や契約条件をお互いに握り合って、人事評価の時に齟齬が生じないようにしたり「首を切りたいのに切れない」「切ったら訴えられた」というトラブルを回避したりしています。そこにズレがあると関係が悪化してマネジメントする上で精神的なダメージが大きい。コントラクターとして採用するなど、リーガルリスクを最小限にとどめる手段も活用しています。

Tippsy, Inc. Founder / CEOの伊藤さんと株式会社TRiCERA 代表取締役社長の井口さん(19期生)に、グローバル事業のきっかけやスタートアップとしての成長についてお聞きした記事はこちら

福山(Fond):私たちは大きな会社を作りたかったので人種にこだわらずに採用してきましたが、結果的に日本人を一度も採ることなく売却まで進めました。それにBクラスの人材で固めてしまうとAクラスの人材を採用することはないので、最初の5人を厳選しました。アメリカでコネクションがなく、英語も喋れない時はOnlabを介して出会った投資家に最終面接を担ってもらい、客観的な意見を聞いて最終ジャッジをしていました。

松田(Onlab):資金調達について伺います。ある一定規模以上のビジネスが見えていないと検討の俎上にも載りません。海外で資金調達を成功させるコツや、いい投資家と繋がるにはどうしたらいいでしょうか。

福山(Fond):日本とアメリカの資金調達で違う点は2つあります。まず、「投資家が多いからアメリカってすごい」と言われますが、それと同じくらいスタートアップも多いので競争環境は激しい。もう一つはEXITの規模というか、日本では時価総額100億円くらいで上場できる会社も多いと思いますが、アメリカのNASDAQでは少なくとも1,000億円や1兆円を目指す会社が増えています。投資家は「この会社に投資したら1,000億円以上になるか?」というのが考え方。そんなところで「他のスタートアップよりもうちに投資すべき」をアピールしなければならないので、自分の会社が時価総額1,000億円以上になるストーリーを説明できることはマストですね。

TikTokみたいに伸びている会社であれば、外国から来ようが、スライドがイケてなかろうが注目されます。つまり「グローバルに使われるプロダクトを作っているか」「ずっと成長しているか」が8〜9割を占めるんではないかな、と。プレゼンのスライドの順番はこうしたらいい、などは最後10%の最適化。もちろん、やらないよりもやった方がいいですけれど。

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Fond Technologies, inc. CEO 福山 太郎 さん

伊藤(Tippsy):確かに、アメリカは投資家の数は多いですが、数打ちゃ当たるっていうわけでもない。Tippsyのようなeコマースに投資したことがあるところや、コンシューマー系のビジネスに投資したことがあるところなど、VCや投資家にはテーマが決まっています。Tippsyはチャイニーズ系のVCに入っていただいていますが、彼らはアジア系ファウンダーに投資することが多い。つまり、関連性があるところじゃないと当たっても意味がないというか、逆にメールをすればするほど評判が落ちます。VCや投資家のターゲットを絞ってたどり着くために、いかにwarm introをもらうか、あるいは、いかに彼らと繋がっている人を見つけて紹介してもらうか、そういった努力に時間をかけるべきではないでしょうか。

日本ではVCの数もそこまで多くないですし、問い合わせフォームから連絡してミーティングを取り付けられますが、アメリカでは起業家同士のネットワークや、アジア人同士の結束の強いファウンダーネットワークを使っていかないとアポすら取れないんですよね。

松田(Onlab):日本だと「あのVCの誰々さんと話しています」と言うとスムーズに進むことが多いですが、VCの多いアメリカでは違いますか?

伊藤(Tippsy):シリコンバレーのトップVCだと繋がっていると思いますが、案件数が多いので、細分化された同じ業界や近い業種でやりとりしているでしょうね。それ以外は大きな案件ではないかぎり、情報は回っていない気がします。

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Tippsy, Inc. Founder / CEO 伊藤 元気 さん

「アメリカ人投資家との相性はどう見極める?」「起業するならやっぱりアメリカ?」

松田(Onlab):「お二人ともアメリカの投資家に入っていただいて、さまざまな場面で助けられながらビジネスを拡大していらっしゃいます。投資家との相性をどのように見極めていますか?」というご質問を頂きました。

伊藤(Tippsy):私は今もアメリカのVC2社にお世話になっていますが、シード段階での投資だったので出会えたのも偶然です。投資家との相性も、まだ選べるような立場ではありませんでした。VCはもともと日本酒が好きで、Tippsyから日本酒を買ったことのある方だったんです。たまたま話す機会があって「投資家なんだ?」「VCをやっているんだ?」と繋がりました。繋がりのなかったチャイニーズ系のVCとは、仲良くさせてもらってお鮨を食べに行くうちに応援してくれる関係になりました。最初の段階で妙なバリエーションを主張してきたり、ミーティングなどでおかしなことを言ってきたり、話していくうちに怪しさを感じ取れるようになりますよね。

福山(Fond):そうですね、相性ばかりはやってみないと分かりませんが、投資家がこちらを判断するのと同じように私たちも相手を見ています。この人はここが変だな、嘘を付きそうだな、高圧的だなと感じたら、間違いなくそれが問題になる。採用だったら間違った人材をクビにできるけれど、株主だったらできない。過去の投資先がどんな評価をしているかを調べるには、VCが過去に投資したのにあまり成功していない会社のCEOと話すこと。VCが彼らにどんな対応をしてきたのかが分かります。

松田(Onlab):スタートアップ側がVCのリファレンスを取るんですね。

福山(Fond):はい。こちらは資金調達をしているので「出してください」と頭を下げがちですが、あちらも出す先を探しています。Fondは何十社に投資するうちの1社かもしれないけれど、私たちにとってはリード投資家は1社しかいないので堂々と同じ目線であちらを面接して、焦らずに意思決定をしています。

松田(Onlab):VCも投資先のリファレンスを取るでしょうから、お互い様なんでしょうね。次のご質問です。「OnlabからY Combinatorのインキュベーションにも参加したとのことですが、ピボットなどを考えている時はどのようにコミュニケーションを取りましたか?また、Y Combinatorに入ってからはどのようにピボットをしましたか?」

福山(Fond):2011年1月からOnlabのプログラムに参加して、約1週間後にY Combinatorのプログラム創業者のポール・グレアムに「イケてないアイデアだから変えた方がいい」と言われました。最初の1ヶ月間で6回ピボットして、2012年2月1日に今のアイデアに決めて3月1日にローンチして、3月末にY CombinatorのDemo Dayというスケジュールでした。当時、メインの株主だったOnlabとY Combinatorにピボットする理由や今後の方向性を伝えました。悪いニュースほど透明性の高いコミュニケーションを心がけましたが、毎週アイデアが変わっていてOnlabからは「大丈夫かな?」と思われたでしょうね。

松田(Onlab):私たちOnlabもそうですが、シードアクセラレーターはむしろ「ピボットしよう」とアドバイスしますよね。

福山(Fond):Y Combinatorの最新のバッチには220社いますが、そのうちの半分がアイデアのフェーズだし、全体の3割が3ヶ月間でピボットしていましたね。この先5年、10年と時間を割いていく中で、いかに自分のやりたいことで大きな会社を作っていけるかにアイデアを絞った方がいいですね。

松田(Onlab):次に、生活面に関するご質問を多く頂いています。「アメリカは生活費が高いですよね。次にスタートアップが盛り上がりそうなインドに行くことを検討していますが、インドのエコシステムはどのように見えますか?」

福山(Fond):インドでやりたいならインドでいいのではないでしょうか。合理的に考えるとアメリカよりも日本でやった方がいいですよね。日本で起業すれば銀行が使えるし、もともとの知り合いもいるし、競合も少ないし、上場ができるので。私がアメリカを選んだ理由は、市場規模がこうだから、確率がこうだからではなくて、アメリカで挑戦して成功するのがかっこいいと思ったからです。メジャーリーグみたいに挑戦したいっていう非合理的なロマンがないと、毎日のようにやってくる試練を乗り越えられません。Excel上の数字で市場を選ぶと長続きしない気がします。どの国で勝負するかというのは、どこのマーケットで戦いたいかを考えたら明確になるんじゃないでしょうか。

三橋(DGUS):確かにそうですよね。お二人は生活面や健康面で苦労したことはありますか?

伊藤(Tippsy):私も妻もアメリカに長く住んでいるので参考にならないとは思いますが、アメリカで結婚してもうすぐ子供が生まれます。子供ができたら1人当たり月10万円の保険料を支払うことになるのでアメリカでの生活費は高いです。それをスタートアップで賄おうと考えたら覚悟が必要ですね。

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本イベント会場の様子

福山(Fond):20代で起業して成功する人もいれば、50代で起業して成功する人もいます。5人の子供がいて成功する人もいれば、子供がいないで成功する人もいるので、状況に限らず何とでもなるのではないかなと思います。

松田(Onlab):ご自分のメンタルケアとして気をつけていることはありますか?

伊藤(Tippsy):自分の調子が会社に影響するので、適度な運動やサーフィンをする時間を作ったり、精神を統一させるメディテーションをやったりしています。いつでも100%の力を出せるように仕事をし過ぎないようにしたり、体を動かす習慣を付けたり、健康的な食事をしたりしています。

福山(Fond):つらいこともありますが、やりたいことをやらせてもらっているから負担になったことがないですね。私はアメリカで挑戦するために生まれてきたと思い込んでいるので、強い思いを持って好きな事業をやっていれば大丈夫です。

松田(Onlab):かっこいいですね!それでは最後のご質問です。「福山さんはY Combinatorに入って現地のインナーコミュニティに入ったと思いますが、アクセラレータープログラムに入る以外に有効だったことはありますか?また、インナーコミュニティに入る上で重要なマインドセットがありましたら教えてください。」

福山(Fond):インナーサークルに入るには、やっぱりいいプロダクトを作ることです。次に、最初はプロダクトが伸びていないので、投資家にスタンプを押してもらっていること。例えば「自分ではジャッジできないけれど、Y CombinatorやSequoiaが評価しているならこのスタートアップはいいんだ」と思われることです。3つ目は学歴や職務経歴です。スタンフォード大学を出た、Googleを出たと言うと「Googleにいたんだったら大丈夫だろう」ってなりますよね。他にジャッジする材料がない時のセーフティーネットになります。

松田(Onlab):まさに伊藤さんがおっしゃっていた、Tippsyで日本酒を買っていたお客様が投資家だったというパターンですよね。

伊藤(Tippsy):事業の成長や実績に加えて、資金調達を大きくしたといったクレディビリティーは作れると思います。先述のように、アメリカに存在するアジア人のスタートアップコミュニティへ積極的に入り込み、自社よりも大きいスタートアップのVCと繋がって投資家を紹介してもらうのが一番の信頼になりますよね。投資家や他の起業家とのネットワークをインパーソンで築くことでコミュニティが拡大していくと思います。

松田(Onlab):ありがとうございます。本日はアメリカでの起業について沢山のお話が聞けました。

園田(Onlab):ありがとうございました。Onlabは3ヶ月間のアクセラレータープログラムを年2回開催し、毎年約10社を採択しています。2018年からはシード期のスタートアップ支援に加えてオープンイノベーション型のプログラムもスタートしていますので、ご興味のある方はぜひ「Onlab事業相談会」やお問い合わせからご連絡ください。

(執筆:佐野 桃木 編集:Onlab事務局)

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