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どのようにESG経営に取り組むべきか?SmartHRが語る、サステナビリティサイト制作秘話|Meet with ESG Startups vol.5

どのようにESG経営に取り組むべきか?SmartHRが語る、サステナビリティサイト制作秘話|Meet with ESG Startups vol.5

近年、「企業価値」と「社会的価値」の両立を目指す「ESGスタートアップ」が注目され、Open Network Lab(以下「Onlab」)でも、国内外の支援先が増えてきました。シリーズ「Meet with ESG Startups」では、スタートアップの事業成長と会社経営のあり方や持続可能な社会へのインパクトをどのように創り出していくのか、経営者としての考え方や企業の様々な取り組みについて伺います。

今回登場するのは、2022年8月に持続可能な社会の実現に向けた取り組みをまとめた「サステナビリティサイト」を公開した、株式会社SmartHR(以下「SmartHR」)。同時期に改定したコーポレートミッションに沿って「SmartHRらしい」取り組み方を考えたと、同社でサステナビリティサイト制作を担当した横溝さんと齋藤さんは語ります。サステナビリティサイト作成に至った経緯、社内外の反応、ESGを受け入れるマインドセットなどについて、デジタルガレージでESGを担当する堤がお話を伺いました。

< プロフィール >
株式会社SmartHR カンパニーセクレタリー マネージャー 横溝 雄一

2008年に建設系技術者アウトソーシング企業に技術者として入社。2009年にIR室に異動し、2010年から責任者としてIR業務に従事。2018年には、管理本部を兼務しグループ会社推進やガバナンス対応などを担当。2020年1月にSmartHRに入社し、取締役会事務局やコーポレート・ガバナンス体制の構築を担うカンパニーセクレタリーユニットを立ち上げ、「執行がフルスイングできるガバナンス体制」の実現を目指している。

株式会社SmartHR カンパニーセクレタリー 齋藤 一貴

2008年、金融機関に入社し、顧客企業のIPO・株主総会支援、役員報酬コンサルティング業務に従事。2017年、コンサルティングファームに転じ、主にコーポレートガバナンス・人事制度構築プロジェクトを担当。2021年11月、SmartHRに入社。報酬委員会の設置(2022年5月)をはじめとした、スタートアップガバナンスのフロンティア開拓と体制の実現を目指している。

株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部 マネージャー ESG担当 堤 世良

三井物産でアメリカや東南アジアの不動産開発、森林・植林関連事業の事業開発に従事。スペイン/IE Business Schoolでサスティナビリティやインパクト投資領域を中心に学び、2021年にデジタルガレージにて、ESG・サスティナビリティの新規事業の創出と、ESGの観点におけるスタートアップの支援・投資等を行う。

サービスや会社の哲学を言語化する、スタートアップ×ESGは、小さく始めることが大事

堤(デジタルガレージ):近年、Onlab生を始めとしたスタートアップも、ESGやサステナビリティへの関心を高めています。しかしながら、何から手を付けていいのかわからないし、専任を置く余裕もない企業が多いというのが、スタートアップ × ESGに取り組んでいる我々の実感です。そんな中SmartHRは、持続可能な社会の実現に向けた取り組みをまとめたサステナビリティサイトを2022年8月に公開しました。

サステナビリティサイトを拝見し、内容が非常に充実していることに驚きました。今日はサイト作成に至った背景や取り組みについて伺っていきたいと思います。まず、サステナビリティサイト公開にあたって、どのようなチーム構成でプロジェクトを始めたのでしょうか。

横溝(SmartHR):私と齋藤はカンパニーセクレタリーユニット(取締役会・株主総会の運営や機関設計の検討などをはじめとしたコーポレート・ガバナンス業務を所管する部署)に所属しています。私がプロジェクトマネージャーで、齋藤がG(Governance)を担当し、広報・労務メンバーがS(Social)、総務メンバーがE(Environment)を担当し、全部で6人のプロジェクトチームでした。ちなみに総務の1人は主に大阪支社勤務なのでリモートで会議に参加していました。だから打ち上げにもまだ来られていません(笑)。

みんなで議論しながら進めていたので、はっきりと分業していたというわけではありませんが、隔週で定例会を開催していて、最初はみんなでESGについて勉強するところから始めました。

SmartHR 横溝さん
SmartHR 横溝さん

堤(デジタルガレージ):SmartHRは原則リモートワークになっているのもあって、全国どこからでも参加できたんですね。それでは、サステナビリティサイトを作成することになった経緯を教えて下さい。

横溝(SmartHR):そもそもなのですが、SmartHRというサービスや会社の哲学とESGの親和性については、ずっと社内で話題になっていました。SmartHRというサービス自体が働き方をどんどん改革するというS(Social)の文脈とマッチしているし、業務をデジタルにしていくので紙の使用量が減り、それに伴って紙を運ぶための移動もなくなるので、E(Environment)にも貢献する。そういう共通認識は社内になんとなくあるものの、言語化されていたわけではありませんでした。なのでそれをしっかりやろう、と考えたのがことの始まりです。とはいえ、何を開示すればいいのかには悩みました。一方的に「これをやっているから見てくれ」と世間に語っても仕方がない。なのでまずは、社会が知りたい情報はなんだろうと整理することから始めました。

堤(デジタルガレージ):たしかに、一方的なレポートではなく社会にどうインパクトがあるのかの文脈整理が必要ですね。今回のサステナビリティサイトプロジェクトはいつから取り組み始めたのでしょうか。

横溝(SmartHR):話が出たのは公開の約1年前。そこからプロジェクトチームを作り、本格的に動き出したのは半年前ほどからです。

堤(デジタルガレージ):かなり時間をかけていますね。

横溝(SmartHR):はい。なにせ僕らはESGの素人だったので、ESGとはそもそも何か、何を開示すればいいのかといったことを調べ、社内に共有していくのには時間がかかりました。

堤(デジタルガレージ):手探り状態のなか、どのように進めていったのでしょうか?

横溝(SmartHR):まずはESGの概念や基本的な考え方、大まかな進め方などについて、コンサルタントの方、この領域に詳しい有識者の方、また既にESG開示をされている先輩企業の方などからアドバイスをいただきました。チェックボックスを埋めるような形式的な作業にはしたくなかったので、たくさんの貴重なアドバイスを噛み砕きながら、「なぜこれをやるのか」を深掘りしながら進めていきました。そのおかげで、ESGについての理解を深められたと感じています。

齋藤(SmartHR):ESGへの取り組みを調べてみると、フレームワークがいっぱい出てくるんですよね。最初は私も混乱しました。これを見ていると、何か大仰なステップを踏んでやらなきゃいけないみたいな感じがしてくるんです。もちろんそれはそれで大事なのですが、スタートアップ×ESGという意味では、リソースが限られている中でまず小さく始めることが大事だと思います。

SmartHR 齋藤さん
SmartHR 齋藤さん

大切なのは、採用も通じたESGを受け入れる経営層と社員のマインドセット

堤(デジタルガレージ):約1年間かけ、自分たちでプロジェクトを進めてきたわけですね。自分たちでやったことを体現していると感じたのが開示の順番です。ESGの開示は通常、その順番通り「E・S・G」の順番にします。しかしサステナビリティサイトをみると、「S・E・G」とSocietyが先にきていますね。「SmartHRがESGを開示するならこの順番だろう」という意思を感じました。

SmartHRのサステナビリティサイトより
SmartHRのサステナビリティサイトより

横溝(SmartHR):まさにその意図で順番を入れ替えたので、ちゃんと感じていただけたのは嬉しいです(笑)。

堤(デジタルガレージ):よかった(笑)。

デジタルガレージ 堤
デジタルガレージ 堤

堤(デジタルガレージ):スタートアップ×ESGという文脈では、プロジェクトチームだけでなく、会社全体にESGを浸透させることが大変だという話もよく耳にします。先ほど「SmartHRにはもともとESGの文化がある」といった趣旨の発言をされていましたが、ESGの社内共有はやりやすかったのではないですか?

横溝(SmartHR):正直言って、取り組みやすかったです。ESGやSDGsに関心がある人は社内に多いだろうとは思っていましたが、想定を超えてみんな関心を抱いていました。プロジェクトチーム以外からも「実はうちの部署でこういう取り組みをやっているんだ」「ESG関連のこういうニュースが出てたよ」と連絡をもらったりして、かなり協力的で我々が驚いたくらいです。

堤(デジタルガレージ):皆さん関心があるということは、同じマインドセットをもつ方が集まってきているということですよね。採用や社内教育に秘訣があるのでしょうか。

横溝(SmartHR):元々そういう素地のある方が入社しているのは大きいと思います。

堤(デジタルガレージ):SmartHR従業員の平均年齢は約32歳と聞きました。一般的に、特にZ世代などの若い世代はESGやサステナブルに敏感で、年齢が上がるほど関心が薄くなると言われています。SmartHRではいかがですか?

齋藤(SmartHR):Gen Zと上の世代のギャップみたいなことですよね。正直それを意識したことはないですね。そもそも年代で固まることもあまりないですし、強いて言うならたまに年齢が近い人で飲みに行く、くらいじゃないかな……。年齢によってESGへの関心に違いがあるという実感はありません。

堤(デジタルガレージ):なるほど、そこも採用時点でスクリーニングがされているのかもしれませんね。これなら全社的に違和感が少なくESGに取り組めそうです。

横溝(SmartHR):おっしゃる通り、ESGについては全社的に情報を共有し、全員で取り組むからこそ意味があると思っています。例えばセールスチームはお客さまとの商談の際にSmartHRのESGに関する取り組みについて聞かれることがあるかもしれません。その際にしっかり回答できることでお客様との信頼関係にも影響を与えると思います。ですので、年齢や他の属性によって関心のあり・なしについて、できるだけ差が生まれないような工夫が必要だと思っています。

齋藤(SmartHR):SmartHRは週に1回全社会議をしているのですが、そこで適宜ESG関連の新しい取り組みや進捗を報告して、従業員の方々に興味を持ってもらうように心がけています。またSlackのオープンチャンネルでは「こういう事例があったよ」「自分たちがやっているこういう取り組みどう思う?」といったコミュニケーションが自然と生まれていますね。

堤(デジタルガレージ):インプットし続けるのは重要ですよね。プロジェクトと従業員が離れてしまって温度差ができてしまうと、全社一丸にはなれない。誰でも入ってこれるようにしているというのは、すごくいいことだなと感じます。

堤(デジタルガレージ):サステナビリティサイトを公開したタイミングはいかがでしたか? 遅すぎるのはもちろんよくないですが、早すぎても経営陣や従業員からは理解されないように感じています。

横溝(SmartHR):結果論ではありますが、良いタイミングでの公表でした。もう少し会社が成長してからやるという選択肢もありましたが、それだと今よりもステークホルダーへのコミュニケーションに工数がかかったはず。それに、今の取締役会議長が就任した際に「スタートアップの模範となるガバナンスを構築したい」といった趣旨の発言をしていて、同様にESGも早いうちから企業のDNAに刷り込んでいこう、という意思決定になりました。

堤(デジタルガレージ):ここでも組織のマインドセットがプラスに働いたんですね。

横溝(SmartHR):SmartHRには「早いほうがカッコイイ」というバリューがあるのも大きいと感じます。「世の中にまだ少ないんだよ」と聞くと、みんなやる気が出てくるんですよ(笑)。

堤(デジタルガレージ):なるほど。まだESGに本気で取り組んでいるスタートアップが少ないし、やり方が確立されているわけでもない。そんな中自分たちなりのやり方で進むことが「カッコイイ」と評価されるなら、プロジェクトは進めやすいですね。

横溝(SmartHR):このタイミングでやらなかったら、今日もこうやって取材していただけなかったでしょうからね(笑)。

堤(デジタルガレージ):サステナビリティサイトを公開して、社内外からの反応はいかがでしたか?

横溝(SmartHR):先程自分たちが「なぜこれをやるのか」を深堀りしながら進めたという話をしましたが、それがいい方向に向いたのか、社外の方から「魂がこもっているサイトだ」なんてコメントをいただきました。これは嬉しい反応でした。株主からは、「自分たちがやりたいことがしっかりキレイにまとまっている」と評価いただいたり、セールスチームからは「セールス上の武器が1つ増えた」というコメントをもらいました。なので社内外に一定の影響はあるのかなと認識しています。また世の中に発表したことで、この取り組みを継続していかなければいけないという責任感を、プロジェクトメンバーだけではなくて経営陣も従業員も抱くことになりました。

齋藤(SmartHR):逆に驚いた反応もありました。「未上場なのに充実してるね」「未上場なのにESGの取り組みをしているんだ」と、「未上場なのに」が付いてしまうことです。我々としては、上場しているかしていないかは一切意識せず、やるべきだからやっているというだけだったので、そういう反応があることにびっくりしました。現に、上場企業だけではなく大学などの組織もESGの開示をしていますよね。「未上場なのに」という言葉は、早晩消えていくのではないかと思っています。

同時に、「やらなければいけない」のニュアンスが変わらないといけないなとも感じました。「株主から言われているからやらなきゃ」ではなく、「社会の一員だからやらなければいけない」という自発的な考え方にしなければ、ESGのプロジェクトは上手くいかない気がします。

世間の常識ではなく、自分たちの「特性」を考えた活動とは何か

堤(デジタルガレージ):目下取り組んでいるサステナビリティ・ESG施策はなんでしょうか。

横溝(SmartHR):サステナビリティサイトを公開した前日に、コーポレートミッションをそれまでの「社会の非合理を、ハックする。」から「well-working」をキャッチフレーズとして、「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」に改定したんです。それもあって、ミッションに沿ったマテリアリティの設定が今の重要課題です。

堤(デジタルガレージ):マテリアリティの設定は何が課題になっているんですか?

横溝(SmartHR):先述したように、サステナビリティサイトは、人事・労務、広報メンバーなどにも協力してもらい、全社横断で作成しました。これはESGにはいろんな視点からのアプローチが必要だからです。ただその裏返しで、幅広い視点を求めるが故にマテリアリティを簡単に決定できないのです。これには頭を悩ませています。

堤(デジタルガレージ):なるほど。具体的な施策をどのように決めていったのかについても教えてください。

横溝(SmartHR):「社名を隠してもその会社のものだと分かるものこそいい企業理念だ」という話をよく聞きますが、ESGも同じだと思います。SmartHRらしい、SmartHRがやるから意味がある活動は何かについてはかなり議論しました。何をよりどころにしようかと考えたとき、ちょうどミッションを改定するという話もあって「誰もが自分らしく働ける社会」というのはどういう社会なのかを噛み砕くことから始めることにしたんです。そこからさらに、SmartHRというプロダクトでできること、逆にSmartHRというプロダクトがなくても私たちだからできることを考える、というプロセスを踏んで、具体的な施策を決めていきました。

齋藤(SmartHR):その上で、SmartHRというプロダクトを提供している以上、S(Social)については特に気を使いました。一般的にSocialとして大事だと言われていることはもちろん、SmartHRだからこそ意味があることをきちんと打ち出すことを意識しています。

SmartHRのサステナビリティサイトより
SmartHRのサステナビリティサイトより

堤(デジタルガレージ):E(Environment)に目を向けると、Scope1・2も開示していますね。これは外部の機関を使いましたか?

横溝(SmartHR):いえ、これも自分たちだけで対応しています。Scope1・2の電気使用量の把握は、基本的にはオフィスで使われている電気を計算式に当てはめて割り出すだけなので、各拠点オフィスの1年間の電気使用量を把握し、計算しました。こうして現状把握をしたあとに、管理会社や詳しい方にヒアリングして、2025年までにScope1・2をカーボンニュートラルにするという目標を立てています。

目標についてですが、カーボンニュートラルは、世間的には2050年までに達成するのが共通認識になっていますよね。ただこれは製造業や建設業など、CO2を減らすのがすごく大変な会社・業種のための期間だと考えています。SmartHRはソフトウェアの会社なのでそれと同じ目標では遅い。実現可能な範囲で高い目標はどれぐらいかと考えて、2025年に設定しました。とは言いましたが正直に言うと、最初僕らは2030年と提案していたのですが、経営陣から遅いと言われて2025年に前倒ししたんです。でも経営陣がそうやって目標を高めていくのはいいことだと感じています。

齋藤(SmartHR):ちなみにオフィスのCO2排出量算定は、総務のメンバーが自主的に算出してくれたんです。ESGの取り組みをしていくという話は前からしていたのですが、「だったらこれは総務がやる仕事だよね」と。お客さまに出す水のペットボトルも、いつのまにか再生可能なものにしようと動いてくれていたり、先述したESGを受け入れるカルチャーがここにもあるんだなと感じました。

横溝(SmartHR):Scope1・2を算出したので次はScope3ですが、これについては、出勤時や出張時の移動、サーバー関連など範囲が多岐にわたるので、次のフェーズの課題となっているところです。

サステナビリティサイトの公開に伴って必要最低限の項目は開示できたかと思っていますので、次は、企業価値向上に貢献するような情報開示をするフェーズに移っていかなければいけませんね。

堤(デジタルガレージ):ちなみに、ペーパーレスについてはいかがですか?

横溝(SmartHR):自社の話をしますと、今SmartHRには700人以上従業員がいますが、東京オフィスにはコピー機が1台しかないんですよ。ほとんど印刷しないので。たまに印刷しようとすると使い方がわからないなんてこともあって、それはそれで不便なのですが(笑)。それぐらい紙を使わないようになっています。そういう意味ではもう既に社内の対応はできていましたね。

海外企業に目を向けるとみえてくる、ESGグローバル・スタンダード

堤(デジタルガレージ):ここまでESGに取り組んできた経験を踏まえて、なかなか事業成長と同時にESG対応に割けないというシード・アーリー期のスタートアップへアドバイスなどありますか?

齋藤(SmartHR):もちろん上場するような大きな会社がESGに取り組めば大きなインパクトがあると思うのですが、だからといってスタートアップだからやらなくていいというものではないというのは、プロジェクトを通して実感したところです。

確かに、ESGにどれだけリソースを割くべきかというのは切実な問題です。本業もありながら片手間に対応することで、結果的にESGが形式的になるおそれもあります。しかしESGを考える上で大切なのは、「大きくなってからやればいい」ではなく、「今できることは何か」というマインドセットです。

堤(デジタルガレージ):あるスタートアップが「ESGの取り組みを自分ごと化させられない」と悩んでいたんです。例えば「給料がいい」という理由で入社してきた社員がいたとしたら、その社員が会社の方針やESGへの取り組みを自分ごとにして継続するのは難しいと。なのでESGに限らずですが、その会社のミッションだったりカルチャーを入社時点でちゃんと選定して仲間にしていかないと、ゆくゆく大変になっていくと感じていました。

その点SmartHRは、最初からミッションをちゃんと共有して、共感できる人を採用している。だからミッションに沿っているESGについても、「今できることは何か」を各自が自主的・積極的に考える企業文化が醸成されているんだなと、今回お話を聞いていて感じたところです。

齋藤(SmartHR):確かに、社内から「なんでそんなことに時間を使うのか」といった否定的な意見が出たことはないですね。もし他の企業でそういう話があるというなら、採用の影響はあるのかもしれません。もともとSmartHRが掲げているミッションに共感できる人がほとんどだからESGも受け入れられやすかったという側面はあるので、そうでなかったらこのプロジェクトも上手くいかなかった可能性はあります。

一応、プロジェクトとしては否定的な意見が来たときのために回答は用意しておいたんです。「ナショナルクライアントや官公庁は環境を気にしているので、自分たちのプロダクトもCO2を排出しないで作られたものであるほうがいい」みたいな。ただ幸いなことにそれを披露する場面は結果的になかったですね。

横溝(SmartHR):これからESG対応をはじめようとお考えのスタートアップへのアドバイスについては、ESGへの取り組みを始めようと思ったら、自分たちに近い規模や業種の事例をまずは調べると思います。ただそれだと、近視眼的になり本当に必要な施策にたどり着かなくなってしまうかもしれません。僕たちもそれを危惧していたので、様々な事例を集めて最終的に海外の大企業など、かなり先進的な会社をベンチマークに置いていました。

例えばマイクロソフトは、カーボンニュートラルは既に達成していて、今は「創業からこれまで排出したCO2をゼロにしよう、カーボンネガティブを目指そう」と言っているんです。それを踏まえると、自然と「2050年にカーボンニュートラル」という目標だと足りないということがわかります。近しい企業を見るのも大事ですが、参考にする企業はもっと先を進んでいるほうがいいと思います。

堤(デジタルガレージ):ESGについては海外が進んでいるから、高い目標という意味では海外をベンチマークするのも大事ですね。

本日はサステナビリティサイトを起点に、SmartHRのESGへの取り組みをたくさん聞かせていただきました。他のスタートアップも参考にできるお話があったのではないかと思います。本日はありがとうございました。

横溝・齋藤(SmartHR):ありがとうございました。

(執筆:pilot boat 納富 隼平 撮影:taisho 編集:Onlab事務局)

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