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エクイティファイナンス×7つの習慣|第1の習慣は主体的であること

エクイティファイナンス×7つの習慣 |第1の習慣は主体的であること

【プロフィール】
Open Network Lab 原 大介

2005年慶応大学卒業、公認会計士試験合格。2007年より新日本有限責任監査法人勤務。金融業や製造業等の様々な業務の監査に従事。2012年より2年間、アメリカ・シリコンバレーに出向、現地でアメリカ企業の上場を支援(3社)。2015年より、不動産ビッグデータを利用したコンサルティング会社・ゴミを原料としたケミカルリサイクルを営む会社でCFO。エクイティのみならず、デッドや助成金等の様々な資金調達手法に精通。現在までの累積調達額は130億円超。

Open Network Lab(以下、Onlab)は「世界に通用するスタートアップの育成」を目的に、Seed Accelerator Programを2010年4月にスタートしました。これまで数百社以上のスタートアップを支援・育成してきました。今回はエクイティファイナンスに心がけておきたいTipsをご紹介します。

【シリーズ目次】
第1の習慣:主体的であること
第2の習慣:終わりを思い描くことから始める
第3の習慣:最優先事項を優先する
第4の習慣:Win-Winを考える
第5の習慣:まず理解に徹し、そして理解される
第6の習慣:シナジーを創り出す
第7の習慣:刃を研ぐ

こんにちは。原大介です。私は、デジタルガレージのOpen Network Lab(以下、Onlab)で、主にプレシード〜シリーズA前後のスタートアップ向けにファイナンスの支援をしています。具体的な支援内容としては、各社の資本政策を一緒に検討したり、事業計画を一緒に作ったり、金融機関や他の専門家を紹介しています。まず、本記事を書いたきっかけですが、私のスタートアップに対するアドバイスは突き詰めると、

今回はエクイティに関して、Onlab卒業生からの質問や勘違いが多かった内容に基づいて説明していきます。すべての内容を網羅しているわけではない点にご留意ください。


①相手のことを理解しましょう
②IPOから逆算して資本政策を作りましょう
③交渉では常に主体的でありましょう

の3点なんですが、この3点は自己啓発の名著である「7つの習慣」

に書かれている内容と同じだなと感じました(パラパラと目次をめくっている時に気づきました)。今回は少し志向を変えて、エクイティファイナンスについて、7つの習慣の観点から説明してみます。(尚、ここに書かせて頂くアドバイスのいくつかは既に他の記事で記載している内容と重複している点についてはご留意ください。)

7つの習慣は、私的成功、公的成功、最新再生の3部構成になっており、私的成功の習慣として、①主体的である、②終わりを思い描くことから始める、③最優先事項を優先するがあり、公的成功の習慣として、④Win-Winを考える、⑤まず理解に徹し、そして理解される、⑥シナジーを創り出すがあり、最新再生の習慣として、刃を研ぐがあげられます。エクイティファイナンスに例えると、私的成功とはきちんと自分たちのファイナンスを成功させること、公的成功とは自分たちだけではなく投資者にもしっかりと成功してもらうこと、最新再生とは1度の成功にとどまらず更なる高みに上っていくことだと思います。

今回は第1の習慣である「主体的であれ」をファイナンスの観点から説明していきます。

第1の習慣「主体的であれ」における、主体性の定義は以下の通りです。

主体性とは、自発的に率先して行動することだけを意味するのではない。人間として、自分の人生の責任を引き受けることも意味する。・・・主体性のある人は、・・・、自分の行動に責任を持ち、状況や条件づけのせいにしない。

エクイティファイナンスにおいての主体性とは、投資家との交渉や結果(バリュエーション、放出率、優先株式なのか普通株式なのか、取締役選任等の条件)について、企業として、納得し、責任を持つことと言えるでしょう。言い換えれば、ファイナンスのプロセスや結果について、腹落ちしている状態とも言えます。

例えば、私は先日まで不動産DXの会社のシリーズAのファイナンスを支援していましたが、最終的なバリュエーションは当初望んでいたレベルではありませんでした。しかし、会社として常に主体的に交渉し、DDについても納得いくまで説明出来た結果だったため、CEOはその結果についてすがすがしい笑顔でした。これは、会社がファイナンスに対して主体的であった結果であると言えます。
逆に、投資家からの条件に納得がいかないまま投資を受ける場合(バリュエーションには納得がいかない、意図しない買い戻し条項が入ってしまった等)やそのことについて不平不満を言っている場合には、会社は主体的ではありません。

では、会社がエクイティファイナンスに対して主体的であるためには、どうすればいいでしょうか?

過去のスタートアップの相談に乗ったうえでは、彼らが主体的になれない理由としては、①期間を見誤る、②プロセスを理解していないことが多いです。第一に、期間については、エクイティファイナンスに失敗する多くのスタートアップはファイナンスの期間を甘めに考える傾向があります。一般的な資金調達が3~6か月必要だと聞くと、自分たちは3ヶ月で出来るだろうと考えてしまうことが多いです。例えば、ランウェイが4ヶ月、自分たちでは3ヶ月でクローズできると考えていた資金調達が実際には6ヶ月かかってしまうと、何も手を打たないと4か月目でキャッシュアウトしてしまいます。この期間を既存株主からの借入だったり、経営者自らが会社に貸し付けてその月その月を凌いでいる状態で、自分たちが腹落ちする契約を勝ち取るのは難しいです。特定の条件を泣く泣く飲んでいるスタートアップを多く見ています。主体的であるためには時間軸に余裕を持っておきましょう。

第二に、プロセスについては、スタートアップ側は、どのような手続きを経て、投資家から入金されるのかをきちんと把握していないことが多いです。ここをきちんと把握しておかないと、DDなどの手続きが終わって、最後に契約書を結ぶ段階になって、自分たちは普通株式の投資をしてもらう予定が、相手は優先株式の投資でないとできないといった事態になってしまいます。プロセスは各投資家によって微妙に異なりますが、基本的にはDD→タームシート(重要な事項の決定)→契約書の締結といくことが多いので、自分たちにとって重要な事項がある場合には(例:どうしても普通株式でいきたい)、早め早めに相手とディスカッションをしていきましょう。主体的であるためには、投資プロセスをきちんと理解し、重要事項については予め相談できるようにしていきましょう。

次に、投資家との交渉や結果がうまくいかなった場合には、どのように対応すればいいのでしょうか?うまくいかなかった場合には諦めればいいのでしょうか?

7つの習慣では、

衝動を抑え、価値観に従って行動する能力こそが主体的な人の本質である。

とあります。
また、

刺激と反応の間には選択の自由がある

これは、刺激(交渉や結果)と自分がその後どう行動するかは直接連動していないことを示しています。

例えば、ママを応援するスタートアップは当初資金調達が上手く行かず、クラウドファンディングで資金調達をすることになりました。クラウドファンディングについては業界内でも前向きでない人がおり、私も支援は打ち切って他に切り替えた方がいいのではないかとアドバイスされたこともあります。しかし、そのスタートアップはそんな逆境もあきらめず、粘り強く資金調達活動を継続し、最終的には大企業のCVCから資金調達することが出来ました。私は一時期彼と一緒に行動することも多かったのですが、彼は現況に文句を言うのではなく、常にどうやったらディールを進められるかについてフォーカスしていたのが印象的でした。また、コロナで大打撃を受けたものの、あきらめずにピボットして成功しつつある会社もあります。

現在、キラキラ輝く企業も、多くの失敗をしています。例えば、クラウド会計の先駆者で先日東証一部に鞍替えしたマネーフォワードの辻社長は、「失敗を語ろう。「わからないことだらけ」を突き進んだ僕らが学んだこと」という本を出版しています。その中には、これだと思ったプロダクトがほとんど使われなかったり、サービスが接続先から拒絶されたりといった失敗事例が多く語られています。諦めない大事さを教えてくれる本なので、是非読んでみてください。

7つの習慣では、第1の習慣「主体的であれ」において、自分の行動に責任を持つ重要さ、結果と行動の間には選択の自由があることを説いています。スタートアップのファイナンスにおいても、自分たちの行動や結果に腹落ちするためには事前準備を怠らないことが重要ですし、仮に結果が一般的に良いとはいわれないものであっても、そこで試合終了ではなく、自分たちの行動によって状況を変えることができます。

7つの習慣は、ファインナンス活動向けに書かれた本ではありませんが、普遍的内容であるため、ファイナンスにも役立つかなと思い、本記事を執筆してみました。

以上、エクイティファイナンス×7つの習慣でした。

(執筆:原 大介 編集:Onlab編集部)

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