2023年04月06日
株式会社デジタルガレージが運営するOpen Network Lab(以下Onlab)は、グローバルで活躍するスタートアップの育成と投資を行うスタートアップ・アクセラレーターです。2010年4月の設立以来、140社超のスタートアップを輩出してきました。 2018年からはシード期のスタートアップ支援に加えオープンイノベーション型のプログラムもスタートし、その活動範囲を広げています。今回はOnlab Seed Accelerator Programの募集に向けてOpen Network Labの松田と園田に、Onlabプログラムの魅力や起業家コミュニティに注力する背景、また卒業後の支援について語ってもらいました。
< プロフィール >
株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部長 松田 信之
東京大学大学院工学系研究科卒。大学院在学中に学習塾向けコミュニケーションプラットフォームを提供するスタートアップを共同設立。卒業後、株式会社三菱総合研究所において、民間企業の新規事業戦略・新商品 / サービス開発に係るコンサルティングに参画。スタンフォード大学への留学時にシリコンバレーのスタートアップエコシステムについて学ぶ。2019年4月より株式会社デジタルガレージにおいて、スタートアップ投資およびアクセラレータプログラムを軸とするスタートアップ支援に携わる。
株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部 園田 祐介
2018年に新卒でデジタルガレージに入社し、マーケティングテクノロジー・セグメントに従事。デジタルマーケティングのプランニング・提案・ディレクションに取り組む。様々な業界の事業者に対し、デジタルとリアルを一貫したマーケティングシナリオとソリューションを提供。2021年よりOpen Network Labに参画。プログラムディレクターとしてプログラムの企画・運営、デジタルマーケティングで培った知見を活かしたメンタリングなどでスタートアップ支援に携わる。
― まず、お二人からご覧になってOnlabのSeed Accelerator Programにはどのような特徴がありますか?
園田:プログラムでは毎年約10社、累計140社以上のスタートアップを採択してきました。その成果の一つとして、Onlab現役生と卒業生の縦の繋がりやアットホームなコミュニティが形成されているのが特徴です。現在の3ヶ月間の短期集中型プログラムでは、スタートアップ1社にメンター1人がついて事業の支援やサービス・プロダクトに対するアドバイスをしています。現役生は日々の事業進捗を報告することによって、メンターから適切なフィードバックを受けられるだけでなく、課題や悩みによっては卒業生や外部の専門家からメンタリングを受ける機会も得られます。
松田:Onlabでは横の繋がりも強く、プログラム中は同期生同士で教え合ったり協力し合ったりしています。同時に、内心では「他の人たちはどうなっているんだろう」とライバル視もしていて、仲間であり競争相手でもある良好な関係を構築しています。また、他社のプログラムにはなかなか見られないことですが、現役生が所属するコミュニティには、起業直後から上場までのあらゆるステージにいる卒業生も在籍しています。昨年ではComiruやFond Technologiesを筆頭に上場した卒業生や、海外企業とのM&Aを経てEXITした卒業生もいます。
― Onlabプログラムを卒業したスタートアップからはどのような声が上がっていますか?
園田:「事業の成長スピードが加速した」とおっしゃっていただいています。「プログラムがあっという間に終わってしまった」「密度の濃いサポートをしてもらえた」というご感想も頂きますね。
松田:Onlabには10年以上に渡って蓄積したナレッジやノウハウ、支援ツールが豊富なので、アンケートでも「困った時に適切なフレームワークやツールが即時に出てくる」というご回答もいただきます。また、一般的に「プログラム」と言うと決まったカリキュラムを受講するものを想像されやすいのですが、Onlabはオーダーメイドの方が意味合いとして正しいですね。スタートアップ各社のお困りごとに対して実効性の高い支援メニューを組んでいく。それは経営戦略だけに留まらず、営業や事業開発にも及ぶケースも多々あります。スタートアップが自分たちではできないことを、私たちデジタルガレージのリソースを活用して実現していく仕組みになっています。
園田:スタートアップのために私たちOnlabメンバーができることは何かを考えながら伴走していますし、常に寄り添う存在でありたいですね。
― Onlabプログラムと提携している「スタートアップ特典」についてお聞かせください。
園田:この取り組みはOnlabの初期から行っているのですが、資金やリソースの少ない創業期のスタートアップがスピードを上げて事業に取り組めるように、インフラやバックオフィス、分析、HRツールといったサービスを多くの提携企業様のご協力によって提供しています。Onlab現役生や卒業生など、コミュニティに所属しているスタートアップは特別価格・プランでご利用いただけます。人気の高いものではNotionやPR TIMES、AWS、Canvaなどが挙げられますね。
松田:SmartHRやoVice、Oh my teethなど、Onlab卒業生のサービスもこのラインナップに入れています。これは卒業生スタートアップの営業支援の一環にもなっていて、特典提供という形で新規顧客を増やせますし、利用する側も他の同期や先輩がどんなサービスを作っているのかをリアルに体験できるようになっています。
園田:Onlab第25期生のGACCIはあらゆるサービスを積極的に使ってくださっていましたね(笑)。各期のスタートアップの成長度合いやニーズによって利用率が変わりますが、事業を立ち上げたばかりのスタートアップに特化したサービスを厳選しているのでご好評いただいています。
― 直近のOnlabプログラムでは、新たにどのような取り組みをしていますか?
松田:Sスタートアップにはプレスリリースやプロモーション、クリエイティブ、資金調達といったやりたい施策が山積みなので、基本的なプログラムに加えて「Experts Day」という各領域の専門家や投資家、先輩起業家による講義を1日にギュッと集中したイベントを実施し、現役のOnlab生のみならず、卒業生にもご参加いただきました。
園田:ご参加いただいたスタートアップからは「どの講義にも学びがあって、専門家とのメンタリングも有意義でした」「これから組織を拡大するにあたり、メンバー定着のために押さえるべき点を把握できました」というご感想や、「卒業後は凝縮して学べる機会がなかなかないので、とても貴重でした。ぜひ継続してほしいです」というご意見もいただいて嬉しかったですね。
― 起業家たちが集まるコミュニティも活発に動いていると伺いましたが、具体的には、どのような活動をしていますか?
園田:コロナ前までは卒業生や現役生スタートアップ、Onlabメンバーの大人数で集まる機会もありましたが、昨今では起業家同士がリアルでコミュニケーションを取る機会が少なくなってしまったのが課題でした。最近では徐々に同期の起業家同士が交流する懇親会も復活して、食を共にしながら情報を交換したり、プログラム中に直面した悩みを語り合えたりしてプラスになったとの声が多かったですね。
松田:コロナ禍ではさまざまなオンラインイベントを行って物理的距離や時間を短縮してプログラムの効率化を図ることができましたが、やはりオンライン上のコミュニケーションでは「1対n」になって横の繋がりが生まれづらいですし、関係を深めるのに限界があると思いました。そこで、最近では起業家同士が集まれる企画を増やしています。
園田:2月の土曜日にはOnlabで第2回目となるフットサル大会も開催しました。現役生のみならず、卒業生や外部のパートナーをお呼びして渋谷のフットサルコートで汗をかいた後ランチを囲みました。普段なかなか会えない方と話せて、新たな絆も生まれ、有意義な企画になったのではと思います。
― 皆さんは懇親会やフットサル大会といったリアルなイベントへ積極的に参加するんですね。
園田:はい、参加者は意外と多かったです。もともとサッカーをやっていた人や軽く運動したい人、仲間と話したい人などが一堂に会する機会になりました。以前開催してご好評いただいたバーベキューも復活させたいですね。小規模のイベントではシャッフルランチもなかなか人気です。
― シャッフルランチとはどのような内容で、どれくらいの頻度で実施されていますか?
園田:Onlab卒業生と現役生各社を繋げる目的でプログラム中に1〜2回、対面でランチやディナーの機会を設計しています。お互いの事業を紹介したり、事業の課題や次のマイルストーンについて相談してアドバイスをもらったりする場になっています。また、このシャッフルランチでは毎回テーマを決めていて、例えば人材採用に悩んでいるスタートアップがいたら成功事例を持っている卒業生を招待したり、デジタル広告に興味を持っているスタートアップには実際に展開している企業を紹介したりしてアドバイスを受けたりしています。
松田:最近ではさまざまな形でEXITした卒業生が増えているので、彼らを囲む会を企画するのも良いですね。また、ハードシングスを経験したスタートアップ経営者たちからのメンタリングがあったら現場のリアルな声を知る機会になるかもしれません。
― Onlabプログラムを卒業したスタートアップに向けて、どのようなサポートをしていますか?
松田:Onlabでは採択企業に対して投資を行うため、プログラムを卒業しても私たち投資家としての支援はずっと継続します。「プログラムが終わったからさようなら」ではありません。Demo Dayが終わった後も、基本的には株主定例会に参加して定期的に事業の進捗をモニタリングしています。これはケースバイケースですが、事業計画作りの支援や、時には金融機関や補助金申請先を紹介したりするといったファイナンス面の支援、また経営戦略だけでなくプロモーションや開発の支援も行っています。
一方で、Onlab卒業生を対象にESG経営のリテラシー向上を支援するプロジェクトも動いています。IPOを目指すスタートアップにはS(社会)とG(ガバナンス)への対応が求められ、投資観点においてESGやSDGsを投資ターゲットとしたベンチャーキャピタルや、ESG重視型のファンドも増加しているため、スタートアップが経営目線でESG対応できるようにミッション、ビジョン、バリューを策定する段階からサポートしています。
― OnlabではSeed Accelerator Program以外にもスタートアップ向けの新しいプログラムがあると伺いました。
松田:Onlab Open Innovationは、Onlabが2018年から取り組んでいる、領域特化のResi-TechやBioHealthなどと分かれていたプログラムを一つに統合したものです。「スタートアップと新しいビジネスを作りたい」「新しい技術で社会実装をしていきたい」といったさまざまな目的を持つ大企業が協賛企業として参画しています。デジタルガレージは大企業とスタートアップをマッチングして、双方が新しい取り組みを推進して成功できるように動いており、協賛企業や行政と一緒に事業を作りたい、社会実装を素早く進めたいというスタートアップにとっても魅力的なプログラムになっています。また、私たちは北海道や福岡にもOnlabブランドの拠点を持っていて、Onlab FUKUOKAでは、セクションLやmatsuri technologiesなど、シードプログラムを卒業したスタートアップが採択される流れも見られますね。PMF後で大企業とすぐに動けるステージにいるスタートアップが対象です。スタートアップと大企業をマッチングして終わり、ではなく、マッチングした後に高速でビジネス検証・開発して新規事業や新規サービスを世の中に出していけるように、またオープンイノベーションを生み出せるように私たちもこれまでのプログラムで培ったノウハウを洗練・進化させていきたいですね。
― Onlab Seed Accelerator Programはどのようなスタートアップに向いていますか。
松田:Onlabのプログラムは、自分たちの事業を推進していく上で経営の基盤をしっかりと作りたい、テクニカルに対応したいなど「何かちょっと足りていない」というスタートアップに向いています。Onlabプログラムにご応募いただいて採択されたら、私たちが各社の事業に足りないものへナレッジやノウハウをどんどん注入していきます。
園田:プログラムは3ヶ月という短期間なので、仮説検証を素早く回せるスタートアップが向いていると思います。プログラムでさまざまなエキスパートからアドバイスを受ける中で、どの意見を取り入れていくかを瞬時に判断していくことも重要です。中には厳しい意見もありますが、忍耐力とやりきれる力が欠かせません。前日にメンターからもらったアドバイスを翌日にはピッチデックに反映させていて、新たなフィードバックを受けられる状態になっているんです。このようにスピード感を持ってアウトプットできるスタートアップはご本人も事業も伸びていくと思います。
― 第27期の募集は2023年5月9日までとのことですが、ご応募を検討しているスタートアップの皆さんにメッセージをお願いします。
松田:第27期では、海外へ進出したいスタートアップに向けてコンテンツを強化するだけでなく、もともとのテーマであったESGやDX、GanerativeAIも注力テーマとして募集をしています。最新テックによりいっそうスポットライトを当てていきますので、これらの領域で挑戦したいスタートアップにもぜひご参加いただきたいですね。デジタルガレージでは世界最先端を走る専門家や起業家の方々とのネットワークや、それをベースにしたメンタリングも提供していきます。
園田:同じ期間で、Onlab HOKKAIDOでも第6期を募集します。Seed Accelerator Programとの併願応募も可能です。北海道にゆかりがなくても「北海道で事業を広げたい」「北海道に新規拠点を置きたい」と考えている方は同時にエントリーすることをおすすめします。
― Onlabが海外への挑戦を考えるスタートアップを募集する背景を教えてください。
松田:Onlabは元々、世界に羽ばたくスタートアップを支援することを目標にしています。これまでもこうしたスタートアップを募集していましたが、コロナ禍の影響もあり海外を目指すスタートアップの応募は減っていました。デジタルガレージのUS拠点でスタートアップとのネットワークがしっかりと構築できてきたこともあり、海外、特にアメリカに挑戦するスタートアップを支援する旨を改めて打ち出しました。
園田:デジタルガレージとしても、世界中の優れた技術者が集まるアメリカに挑戦する日本のスタートアップをサポートしながら事例を作っていきたいと考えています。デジタルガレージにはサンフランシスコに拠点を置くインキュベーション・スペースがあるので、日本とアメリカで連携した支援が可能ですし、すでにアメリカで活躍しているOnlab卒業生と現役生を繋げるイベントも企画していきたいですね。
(執筆:佐野 桃木 編集:Onlab事務局)
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